第77話 出前一丁、味二兆

文字数 781文字

「袋入りラーメンの王様といえば、出前一丁よね」
 このあいだの袋入り焼きそばに続いて、こんどは即席ラーメンの話題である。

「ココリコの遠藤も好きなんだっテ」
 エリのネタに乗っかりたいところだが、下品なのでやめるメシヤ。

「醤油だけかと思いきや、他にも味があるらしいぞ」
 地域限定で味噌やしお、とんこつも販売されていた。いまはとんと見掛けない。

「先日のお話にもありましたが、インスタントと言っても、作り方次第で全然味が変わりますわ」
 レマはお湯少なめでスープを濃くしたいほうだ。

「玉子とかハムとかそのあたりの具はおいておいて、まず麺を美味くするシンプルなレシピがあるよ」
 めし屋フジワラの麺類は充実している。料理人がインスタント麺を美味しく作る番組に、ここのところメシヤは感化されている。

「へえ、食べてみたいわね」
 サッポロ一番よりも出前一丁派のマリア。

「うん。作りながら説明するよ」
 鍋に火を掛けるメシヤ。

 ①沸騰した鍋に麺を入れて中火で三分。
 ②どんぶりに粉末スープを入れておく。
 ③付属のごまラー油を小鍋にあけて、大さじ一杯のごま油を入れてまぜる。これを強火で二分。
 ④ ②に①と小口切りのネギを投入して、最後に③を掛けて出来上がり

「うワ~、いい香リ~」
 器用に左手ですするエリ。

「いただきますわ」

「え! 高級中華料理店の〆に出て来る味だわ!」

「いままで食べていた出前一丁は、いったいなんだったんだというくらいの変貌ぶりだな!」
 箸が止まらないイエス。

「麺が旨味でコーティングされているみたいですわ!」
 スープもがぶ飲みしてしまうほどだ。

「メシヤ、なんてものを食べさせるノ!」
 なぜか怒っているエリ。

「あれ、お口に合わなかったかな?」
 頬を掻くメシヤ。

「これジャ、デブまっしぐらになっちゃうヨ!」
 メシヤは、デジャブを覚えた。

 人類は、麺類は、禁断の味に到達した。



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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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