第120話 昨日までのガラクタを処分処分

文字数 1,013文字

 キョン子がもう三日も休んでいる。
店長に促され、様子を見に行くことになった。

「この辺だな」
 北伊勢市内の富裕層が住むエリアだ。

「お、お~~~!」
 一人暮らしでこんなデカい家に住んでるのか。

「キョン子、いるか~?」
《開いてますんで、どうぞ~》

「うわっ、なんじゃこりゃ」
 足の踏み場も無い。

「ゴホッゴホッ」
 さっきから咳き込んでるな。

「インフルか?」
「そうじゃないみたいなんスけど、この有様です」

「お前、これじゃ汚ギャルだぞ」
 清潔好きではあるが、片付けられないんだろうな。

「ボクも一人暮らし始めたばかりで、分かんないことが多くて~」
 置いてある小物やインテリアは女の子らしいが、この散らかりようではな。

「たぶん咳もこれが原因だぞ。ホコリまみれだ」
「面目ないっス」
 折り上げ天井なんて久しぶりに見たな。

「煤払いだな。キョン子の実家でもやってるだろ?」
「いやあ、懐かしいっスね~」
 懐かしむほどの年じゃないだろ。

「ホレ、俺がまとめてやるから要るモノだけ教えてくれ。あとはゴミ袋に詰めてやる」
 片付けない人間の言い分として、大事なモノが捨てられないってのがあるが、俺はその意見は尊重している。だが、その中でも要らないゴミが場所を占領して居住スペース圧迫している部分はある筈だ。そういうやつから捨てていけば良い。

「タンスやトイレのプライベートゾーン以外ならお願いするっス」
 お前もやるんだよ!と言いたいところだが、さすがに俺もそこまで鬼じゃ無い。

「キョン子、都度片付けが如何に大事かってのがよく分かるな」
「ああ~、ボク出来てないっスね~」
 料理でもそうだが、包丁を使ったらスペースを確保して、置く位置を決めておかないと邪魔になる。また後で使うからって適当に置くと美味い料理なんか出来やしないぞ」

「この本たちもそうだな。また後で読むんだろうが、ホームポジションに戻さないと」
「先輩、慣れてますね」
 『チップス先生さようなら』を読むくらいなら、寝ながらポテチを食うのをやめろ。

「風邪は躰を掃除してくれるらしいぞ。これを機会に生活を改めることだな」
「わかりました~」

 生活サイクルで掃除が抜け落ちていると、いくら勉強や仕事をしても新しいことが身に付かない。棚が埋まっていたら、幸運は逃げていくぞ。

「おい、こんなに週刊誌を溜め込むなよ」
「あんなもんは、ゴミですよ!」

 名誉毀損より信用毀損で懲役刑にしてやらないと、
調子に乗ってまた打ち続けるぞ。










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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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