第33話 ゲーセン場のアリア
文字数 1,022文字
パチンコ店の設定なのに、いっこうに勤務風景が描かれないな。
「課金するよりはいいだろう」
金のあるやつだけが強くなれるシステムに、見切りを付けた。
「なんスか、その懐かしい画面は~?」
俺はゲームをプレイしていたのではない。ゲームを作製していたのだ。
「俺はレトロな横スクロールゲームが好きでな。いまの作品はFPSやTPSばかりだろ?」
「言われてみればそうですね。往年のゲームファンの中には、あれで離れた人もいるみたいです」
文字通り、近視眼的になってしまう。
「RPGが苦手な人の中には、バトルシーンが退屈でレベル上げが苦痛だって意見もある」
その問題を解決したのが、クロノトリガーに代表されるアクションRPGだ。
「それを横スクロールでやろうっていう訳ですね」
キョン子も乗り気だ。
「そう。古いところだとドルアーガやハイドライドもそうだな」
あれは横スクロールではなく、俯瞰視点だが。
「ドラゴンバスターやイースみたいなのを目指してるんスね!」
お前、俺より年上なのか?
「その前に試したいことがあってな」
「先輩、悪い顔してますよ!」
「まあ、やってみろって」
キョン子にジョイスティックを渡した。
「え、スーパードラクエブラザーズ?」
軽快なオープニング画面だ。
「うわっ、記念すべき第1作目のマリオの画面じゃないスか!」
それだけじゃないぞ。
「あれ、クリボーじゃなくてスライムが!」
「ホレ、そこでBボタンだ」
勇者の剣がスライムを突いた。
「あっ、経験値とゴールドが貯まるんスね!」
どうやら気に入ったようだ。
「ギラも使えるぞ」
キョン子はフラワーを手に入れると、火の玉を吐き出した。
「パタパタ、じゃなくてドラキーをやっつけましたよ!」
「その調子だ」
「これ、もしかして四人同時プレイが出来たりします?」
「もちろんだ」
二人同時プレイなら懐かしのダブルドラゴンやダイナマイト刑事があるな。
「へえ~、面白い! バトルステージが終わると、街の中でのアドベンチャーモードに切り変わるんスね」
「そうだ。ケルナグールもこれに近いな」
「さあ、大詰めだぞ」
キョン子も筋がいいな。
「クッパ、じゃなくて竜王が!」
竜王の口から吐き出される炎は、作るのに苦労したぞ。
『クックックッ・・・。どうだ、世界の半分が欲しくはないか?』
(ん? こんなの入れたっけか?)
「くれるもんならもらうっスよ!」
画面が血の色に染まる。キョン子は世界を救えなかった。