第1話 マリアちゃん、ハイキック!

文字数 777文字

「安倍、マリアだな?」

「いきなり怪しいわね」
 男の横を素通りする。

「来いっ!」
 右手でマリアの左手を引っ張ろうとする暴漢。

(マリア・・・!)

「ガラ空きだわ」
 予備動作無しの右ハイキックが、男の側頭部をまともに捉えた。

 白目を剝いて、崩れ落ちる巨体。
「おととい来いっての」
 手癖は良いが、足癖の悪いマリア。

「最近の女子は逞しいというかなんというか・・・」
「白馬さん、違いますわ。マリアさまが特別なんです」
 漫画の真似をして、危険を招いてはいけない。



「日本の治安はどうしちゃったのよ」



~~~
「マリアは相変わらず柔らかいよね」
 猫の動きを戦闘に取り入れている。

「まあ、柔軟は毎日やってるからね」
 今朝のことは口にしないマリア。

「どういうやつだ?」
イエスも野球の身体作りに取り入れようとしている。
パーフェクトヒューマン・佐々木朗希は180度開脚が出来る。

「股割りも良いんだけど、あたしが好きなのは立ちながらやるストレッチよ。高い鉄棒なんかに足を載っけてさ」
 校庭にあるブロック塀の上に、足を載せるマリア。いまは清掃時間中である。

 真似するメシヤ。ブロックが階段状になっているところがあるので、高さで難易度調整が出来る。雲梯や肋木ももちろん有効だ。

「これ、脚裏伸びてるのがすごく分かるし、気持ちいいよ!」
 痛すぎたら一段落とす。行けそうならもう一段上げる。

「自分のペースで近づけばいいよネ」
 エリの身長は低いが、トの字に脚上げが出来る(真上に180度蹴り)。

「昔から思ってたんだけど、サッカーと格闘技ってすごく相性良いと思うんだよね。
 身体が柔らかいほうが絶対キックに活きてくる」
 空手経験者がサッカーをやるのは漫画でお馴染みだ。

「なーんだ」
 いまのままでボリショイのトップスターになれるマリア。

「乱闘で制圧するって話じゃ無いのね」
 人生はいつも危険なサーカスさ。
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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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