第83話 最初に好きになったのは、声

文字数 757文字

(メシヤさま、着痩せされるとは思っていましたが)
 鍛えられた背中と、整えられた指先を併せ持つ。

「急に静かになるんじゃないわよ!」
 時々黙りがちになる癖がある。

「考えるときに喋ってる人って、いなくなくなくない?」
 コレよくない? よくないコレ? 
 よくなくなくなくなくセイ イェーッ

「着替えのシャツが二枚は必要だな」
 まだまだ残暑が厳しい。

「全館空調が整備されてるとはいえ、外に出たりすると汗だくだよ」
 校舎のような建物には、個別空調よりもセントラル空調が適している。

「汗っかきなのはしょうがないけド、汗臭いのは生活習慣の問題だからネ」
 汗自体は臭くなくても、濡れたシャツを放置すると、悪臭を放つ。

「昨日のドイツ戦を観たら、興奮するのも仕方ないわよね」
 昼休みにグラウンドでサッカーに興じていた。

「メシヤさまとイエスさまの声が、よく届いていましたわ」
 二人とも、声の通りが良い。

「メシヤってぼそぼそ喋るときもあるけド、基本声が大きいヨ」
 意外と肺活量がある。

「カラオケもそうだけど、大きな声を出すのってすごく重要だと思うんだよね。なんかさ、たまってたものを吐き出せるというか」
 取り入れるためには、出されなければならない。

「バイト先でも顕著なんだけど、責任のあるポジションの人って、発声が他の人と違うのよね」
 周囲でも観察してみよう。

「そうだな。いくら能力があっても、何を言ってるか分かりづらい喋り方をする人物は、どうしても裏方に回りがちだ」
 イエスの職場は現場仕事だけに、やたらと声のデカい男の集団である。

「声のデカい人間の意見だけが通るなんて悪く言われますが、あながち間違っていませんわ」

「あたしはエリちゃんの声が好きかな」
 エリのモデルは、Angel voiceとおもしろキャラで人気を博した、亀井絵里である。





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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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