第46話 エスプリックなまなざしに

文字数 825文字

「ワイドショーがこのニュース一色っスね」
 道ならぬ恋に、有名芸能人が窮地に立たされている。

「人の恋路にとやかく言うつもりはないが、時代が悪かったのかもしれないな」
 魔性の女というのは、いかにもという風貌から程遠かったりする。

「去年もありましたけど、プライべートなやり取りをネットに載せられるのはたまらないっスね」
 相手に読んでもらうためだけに送ったものを、勝手に公開する事例が増殖中だ。

「手元にあるからそれをどう扱ってもいいって思っちまうんだろうな。あまり知られていないが、手紙にもちゃんと著作権があるんだぜ」
 
「へえ。私用文書等毀損罪や信書開封罪は知っていましたけど・・・」
 たまに小難しい言葉をスラスラ言いやがるな。
 
「今回のケースは当てはまらないな。だが、著作権のある手紙を公開するのなら、当然著作権者である彼女の許諾が必要だ」
 入手経路も怪しいが、勝手に公開したらもちろん罰則がある。

「なんかボクらの回の時って、行列の出来る法律相談所みたいになってますね!」
 いや、ゲーム回もあるぞ。

「そうなってくると、スポーツ選手とのHなトークを勝手に公開した人も、当然著作権侵害になりますね」
 その内容が真実で当事者が何らかのペナルティを負ったとしても、投稿者の罪が阻却される訳では無い。

「そうだな。あれは引用だって言うかも知れんが、引用できるのは本人によって既に公表されている著作物だけだ」
 あんなものを勝手に公開されて責任を取らされるなんてのは、あまりに理不尽だな。

「まあやったことは褒められませんが、代償が釣り合わないっスよね~」
 キャンセルカルチャーの行き着く先は、間違いなくデストピアだ。暴力を使わないバトルロワイヤルだな。

「もっと巨悪がいると思うんですけどね~」
 真実情報はダークサイドにとって、邪魔もの以外の何ものでもない。

 オフレコと宣言するのは、命取りと同じだ。
今回の件だが、公衆送信権・複製権・公表権を侵害することも、附記しておこう。





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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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