第46話 エスプリックなまなざしに
文字数 825文字
道ならぬ恋に、有名芸能人が窮地に立たされている。
「人の恋路にとやかく言うつもりはないが、時代が悪かったのかもしれないな」
魔性の女というのは、いかにもという風貌から程遠かったりする。
「去年もありましたけど、プライべートなやり取りをネットに載せられるのはたまらないっスね」
相手に読んでもらうためだけに送ったものを、勝手に公開する事例が増殖中だ。
「手元にあるからそれをどう扱ってもいいって思っちまうんだろうな。あまり知られていないが、手紙にもちゃんと著作権があるんだぜ」
「へえ。私用文書等毀損罪や信書開封罪は知っていましたけど・・・」
たまに小難しい言葉をスラスラ言いやがるな。
「今回のケースは当てはまらないな。だが、著作権のある手紙を公開するのなら、当然著作権者である彼女の許諾が必要だ」
入手経路も怪しいが、勝手に公開したらもちろん罰則がある。
「なんかボクらの回の時って、行列の出来る法律相談所みたいになってますね!」
いや、ゲーム回もあるぞ。
「そうなってくると、スポーツ選手とのHなトークを勝手に公開した人も、当然著作権侵害になりますね」
その内容が真実で当事者が何らかのペナルティを負ったとしても、投稿者の罪が阻却される訳では無い。
「そうだな。あれは引用だって言うかも知れんが、引用できるのは本人によって既に公表されている著作物だけだ」
あんなものを勝手に公開されて責任を取らされるなんてのは、あまりに理不尽だな。
「まあやったことは褒められませんが、代償が釣り合わないっスよね~」
キャンセルカルチャーの行き着く先は、間違いなくデストピアだ。暴力を使わないバトルロワイヤルだな。
「もっと巨悪がいると思うんですけどね~」
真実情報はダークサイドにとって、邪魔もの以外の何ものでもない。
オフレコと宣言するのは、命取りと同じだ。
今回の件だが、公衆送信権・複製権・公表権を侵害することも、附記しておこう。