第106話 テクノストラクチュア
文字数 815文字
神籬の登場で出番は少なくなっているが、白馬を主人公としたサイドストーリーも存在する。
「予算が莫大だからな」
白馬に指令を下すのは、姿の見えない〔ボス〕である。
「復興の時もそうですが、多重下請け構造を崩さないことには、なんともしようがありません」
建設の話題で破壊の話をする二人。
「実際汗をかく職人に渡る実入りがあれではな」
コストカットは下請けへの発注額を減らすのではなく、あいだに入る有象無象を排除すれば良いだけである。
「そうすれば全体の工事費用も当然下がる。まあ、分かっていてとぼけているのだがな」
実作業の全容も分からない人間が、どのように指示・管理をするのか。
「口だけ上手い人間と言いますが、てんでおかしいことを口走るので、口も下手なんですよ」
やったこともないものを、説明できるわけがない。
「研修で現場に入る期間を設けていたりするが、気休めだな。ほんのわずかでいなくなる」
建設業は27種の専門工事があるが、ひとつの業種につき2週間でも働かせてもらってはどうか。一年ちょっともすれば、どこでも引っ張りだこになる多能工が誕生するだろう。
「無謀な話に聞こえますが、昔は丁稚奉公でなんでもやっていたもんです」
秀吉は『どうする?』と悩む間もなく、こなしていた。
「秀吉の例を見るまでもなく、そうした人間が天下人になっていくのはごくごく自然のことだな」
出来る人間の指示が的確なのは、明白だ。
「派遣で起業するなんてのを聞くと、行く末が心配になりますね」
その社長も自ら現場に飛び込んでいくのなら、話は違ってくる。
「ガルブレースの言葉を借りるなら、『意志決定は資本家・経営者から離れて、技術者集団に移行する』とのことだ」
アニメのプロデューサーより、アニメクリエイターの話のほうが面白い。
「北伊勢にそうしたエンジニアが集まりだしているのは、良い傾向です」