第47話 僕を楽しませるものは不予定調和の毎日
文字数 738文字
ちょっと前までは穏やかすぎる日々に焦っていたニカル。
「ああ。娯楽が限定されていた時代とは雲泥の差だな」
神籬は、急変した原因を知っている。
「退屈だったからって禁断のノートを使った主人公もいましたが、それとはまた違ったケースのようにお見受けします」
神籬が事情を知っていることを察するニカル。
「お前も知っているだろう。藤原メシヤ界隈がホットスポットなんだよ」
神籬は中部経済新聞を拾い読み終えると、テーブルにサッと置いた。
「通常の方法では彼個人の存在を知ることは出来ませんね。最近ようやくプロテクトが薄らいできましたが」
ニカルもメシヤが書く個人ブログの読者である。
「俺も白馬も探偵なんて言ってるが、究極の目的はメシヤなんだよ」
本当の危険人物は、まったく人畜無害な風貌をしている。
「まあ、彼はデンジャーですよね。色んな意味で」
そう言いつつもご機嫌なニカル。
「お前もロンドンで燃え尽き症候群になったんだろ? こっちに帰ってきて正解だぜ」
この国は才能の無駄遣いが多すぎる。
「わたしもメシヤ少年の噂を聞きつけまして、彼個人に科学的な関心を持ちました」
おそろく分析不能だろう。
「いま世界は大混乱中だが、安定の時でも不安定の時でも気の持ちようだぜ」
困難に見舞われると、人は輝く。
「わたし、大好きなRPGをやってた時に、ズルして攻略本を見たことがあるんです。そしたら楽々クリアできたんですけど、最初の頃の楽しさが吹っ飛んでしまって」
すべてのことにあてはまる。
「AIを使って生活を楽にだとか、人工的施術で美貌を得たりだとか、その是非をめぐって方々で議論になってるよな」
「その内に分かる。ちゃんと釣り合いが取れるようになってるんだよ」