第141話 飛べ! 速く、強く、高く
文字数 898文字
これが北伊勢高の校風である。
「それ目当てで入学するやつもいるらしいぞ」
十九川工務店は、期待施工の工風である。
「北伊勢高から歩いて来れる距離でしたね」
レマが本気でやると目立ちすぎるので、抑え気味だ。
「気持ちいいネ!」
最初はチョロばかりだったが、物の数球でスマッシュショットを連発するエリ。
マリアはロングポニーテールをスナップバックから出していたが、エリはツインテールをキャップの両端から飛び出させていた。女子プロの髪型がスナップバックポニーテールしかバリエーションが無いため、自分で両穴をあけたようだ。
「へえ、あんたもやるじゃん」
珍しくマリアが褒めた。彼女に長い得物を持たせてはいけない。
「ここまで来るのに苦労したよ」
メシヤは左打ちであった。
「メシヤは最初散々だったんだ。左打ちに変更して良かったな」
それじゃおもちゃだと酷評されたほどだ。ゴルフは野球と違い、左利きでも右打ちにするケースが圧倒的に多い。ゴルフの指導者は左利きが右打ちする優位性を強く述べているのであるが・・・。
「ワタシはクラブが無いから右で打ってたけド、試してみル!」
メシヤのPINGを借りる。フィジカルお化けのエリなので、左右問題なく打てた。
「左打ちは参考にするテキストが無さ過ぎですわ」
レマの言う通りである。
「そう。だからプロの左打ち選手の動画を見るしか無いんだよね。それでも少ないけど」
日本のプロも左打ちは極端に少ない。昔で言えば羽川豊、最近は細野勇策が華々しい。
「海外だと結構いるわよね」
フィル・ミケルソン、バッバ・ワトソンらがいる。面白いことに、ミケルソンはゴルフ以外は通常右利きのようである。
打ちっ放し場ではヤード数の表示があるが、バッティングセンターのように的が数カ所設置されていた。
「また当たりましたわ!」
メシヤが最奥300ヤードの的に連発で命中させた。
パチパチパチパチ・・・
「メシヤくんとやら。見せてもらったよ。どうかね、私の組織に入る気は無いかね?」
覆面にサングラスの、見るからに怪しい男が話を持ち掛けた。声は、千兵衛によく似ていた。