第20話 竜王は生きていた

文字数 1,013文字

「せっかくの昇竜ユニフォームだったのになあ」
 日出づる国の、ライジング・ドラゴン。

「ヒットを与えていないのに、点を失ってしまってはな」
 天を見失ってはいけない。

「金色を使うのは良いアイデアだけど、テレビ映りが悪い感じがしたわ」
 現地での評判は良いだけにもったいない。

「鳥山明先生に頼めないのかナ?」
 愛知県在住の鳥山先生は、ドラゴンズファンである。

「ドラゴンボールとの相性も良さそうですわ」
 鳥山先生は良くても、ジャンプ関係者が首を縦に振らないかもしれない。

「ユニフォームのデザインってすごく重要なんだけどね。あまりわざとらしすぎず、カッコイイ感じで仕上げてくれそうだわ」
 ドラゴンボール、ドラゴンクエストと来たら、次はドラゴンズだろう。

「マリア、そういう服持ってなかっタ?」
 エリはスタジャンとスカジャンを勘違いしている。

「エリちゃんまであたしをヤンキーキャラにしようとしてるわね!」
 本当に昇り龍のスカジャンを持っていることは、黙っておいた。

「服で強くなれたら苦労しないが、赤ヘルの例もあるからな」
 三年連続最下位だったかつての広島。帽子だけ赤色に変えた1975年に、見事初優勝を果たした。1977年からは、ユニフォームも赤色へと変更している。

「準備するのに何年も掛かるとかそんなことはないんだよね。落合監督が就任した年もいきなり優勝してるし」
 落合が記者泣かせなのはちゃんと理由がある。失敗した選手を責めるようなコメントは士気を下げるだけだし、活躍した選手を持ち上げるのも、他の選手が不満に思う。

 ゲームの最中に顔の表情を出し過ぎてはいけない。選手はそれでとんでもない重圧が掛かる。あまり口を出しすぎず、選手を信頼することである。

「確かに、落合監督は何を考えているのか分からない不気味さがあったわ」
 マリアは貶しているわけではない。落合が試合を離れれば饒舌であるのは、TVやYouTube、書籍を読めばよく分かる。

「怪我人が多いのは致し方ありませんが、メンバーの配置に悩んでいる様子がうかがえますわ」
 オーソドックスな考えとして、もし2番バッターが怪我で離脱したとしたら、そこを埋める選手だけを二軍からあてがうようにすることである。他の打順を崩してまで組み直そうとすると、指揮するほうも大変だし、選手も考えることとやることが増えて混乱してしまう。

「まだ4月、始まったばかりだヨ!」
 逆転こそが、野球と人生の醍醐味である。



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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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