第116話 恨みハラスメント

文字数 791文字

「わたしは同じ台詞の使い回しが好きではないのですが」
 誰だってそうだと思うが、知らない内に同じ台詞が使われる空間にとどまっている人間は多いな。

「自分の我欲を満たすために憲法違反という言葉を使っている節がありますね」
 憲法はどんなワガママでも許してくれるわけじゃないぞ。

「ハラスメントもな。あんなに連発されちゃ会話にならないぜ」
 ろくな仕事にもならない。

「憲法については第十二条で、権利濫用の禁止が言われています」
 あいつらが不断の努力をしているようには見えないぞ。

「いくら憲法を持ち出しても公共の福祉に反していたら、デタラメな要求だと突きっ返せばいいんです」
 被害者ビジネスでは無くて、なぜただのビジネスが出来ないのか。

「あまり法にも期待出来んな。賞賛されるべき人間が叩かれ、ろくでなしが持ち上げられる世界じゃな」
 怠惰浪費の弊風を生じ、勤労の美風を害している。

「そうでしょうか? やりすぎた彼らは逮捕され始めていますよ」
 副次的犯罪を誘発するし、国民経済の機能に重大な障害を与えかねない。

「俺の言いたいのはな、お前にも関連することなんだよ。つぶされたテクノロジーってやつだな」
 先端的過ぎる研究は、その偉大な内容に比して見返りがあまりにも乏しい。

「世界中にそういう研究者がいますが、日本は特に多いですね」
 科納博士の発表も、すべては世に出回っていない。やばすぎる案件がいくつもある。

「表に出て来るのは、たいして影響力がない発明だよ。激ヤバのは命に関わる」
 白馬のツレも非道い目に遭ってるしな。

「彼らの無念を思うと、いたたまれないですね」
 ふだん冷静なニカルでも、怒りが伝わってくるな。残された者がきっと意志を受け継いでくれるさ。

「ハラスメントと名の付くものはろくなもんが無いが、恨み晴らすメントは唯一まともな逆襲だな」
「神籬さん、最後にしょうもないオチを付ける癖は直りませんね!」







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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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