第11話 美味礼讃
文字数 764文字
マリアは会話の糸口となりやすい。
「フレンチがもっと家庭的になればいいのになってね」
世界三大料理とされるが、実質最高峰である。
「そう言われれば、フレンチ食堂なんて触れ込みのお店は聞きませんわ」
趣向を凝らした料理を口にすれば、知に触れる心持ちだ。
「メシヤがすでにやってるじゃン!」
ところが、メシヤは中華舌なのである。
「フレンチ定食ってのは用意してるよ。仕込みに時間が掛かるから数量は限られてるけど」
ワンプレートに誰もが聞いたことのあるフランス料理が載せられている。
「ミニオムライスにフランス国旗が刺してあるのがメシヤらしいな」
お子様ランチ? なるほど、確かにマズいツラだ。
(オムライスは日本発祥だったと思いますが・・・)
「高級レストランだと躊躇するけど、これなら行きやすいわよね」
初デートがラーメン店で成功するのは、ファイナルファンタジーだ。
「フレンチも家庭的な料理があるかラ、そういうところから攻めていくといいネ」
フォアグラが手に入りにくくなっている。
「メシヤさまの負担が増えないか心配ですわ」
レマは料理人メシヤに対してではなく、エプロンを畳んだ後のメシヤの活動に、指令がくだされている。
「フレンチはマナのほうが得意だよ。僕も好きだから全然平気だけど、調理器具はどうしても増えるかな」
都心部ではないので広めの店内であるが、使用頻度の低い道具をあまりいくつも置いておけない。
「取っ手の取れる鍋ってさ、スペース的にはありがたいけど運ぶときにおっかなびっくりよね」
運ぶときにとっても取れてはいけない。
「あれなんだけど、僕は絶対差し込み式のほうがいいと思う。掴むだけじゃ重みが掛かったら外れちゃうよ」
受け口と差し込んだ所の固定する治具を簡易的にデザインできれば、普及しそうである。