第159話 分けるから、分かるんだ

文字数 770文字

「なんでも一緒くたにすると、ボヤけるんだよね」
 平等の精神をふりかざして違いを無視すると、日常生活に支障を来す。

「メシヤさまはよく一覧表を作成していますが、あれはちゃんと目的別ですものね」
 ひとつのことに気を取られて他への注意が散漫になるメシヤにとって、こういう外部アシストが必須だ。

「難しそうに見える漢字の覚え方も、分けるといいわ」
 憂鬱の覚え方がいっとき話題になった。今日のマリアはサイドポニーだ。

「マニュアルもそうだよな。1工程ずつ分けて書いてあるからなんとかやれてる部分がある」
 区切り方が大まかになってくると、失敗の元だ。

「複雑そうに見える料理モ、バラバラにすれば自分にも作れる気がしてくるヨ!」
 メシヤのお株を奪う発言である。

「リーダーがみんなを引っ張っていくには目標とか大局観が必要だけど、いざ技術や戦術ってなった時に、神経質なくらい細かく突き詰める作業が要るんじゃないかな」
 長いトンネルを抜けてもまたトンネルがあらわれる。雌伏のドラゴンズである。

「差別だってことさらに言うんじゃ無くて、お互いの違うところを認め合った方が、理解は進むと思うわ」
 壊れるほど愛しても、3分の1も伝わらない。

「今日はなんだか気分が悪いなって感情も、分けてみると解決策が見えるかもな」
 心にプレッシャーがのしかかっている原因を、しらみつぶしに上げていくしかない。 

「乙女心は複雑なんだヨ」
 ツワモノが裸足で逃げ出すエリである。こしゃっとマリアのほうを向く。

「マリアさま。お誕生日おめでとうございます」
 レマがデコレーションケーキに火を灯した。ここに居ないレオンの分もあわせて、6つに切り分けるつもりだ。みなも祝福の言葉を掛ける。

「ありがとう、嬉しいわ」
 中秋の名月にふさわしい月下美人。満月とウサギを(かたど)った亀山ローソクを、豊かな肺活量で消灯した。





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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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