第23話 KOMEとCOME

文字数 1,035文字

「もっと米を食べないとなあ」
 ごはんのおかわりが出来ると、客の来数も増える。

「パンも好きだけど、結局はお米なのよね」
 三重も隠れた米所だ。

「体育会系なら必ず言われるな。試合の前はパンでなく米を食えと」
 イエスも米派だ。

「ここ数日の中日戦を見てるト、粘り強さが欲しいところだネ」
 リードしていてそのまま逃げ切れるか、逆転されてしまうのか、それを分けるのは土俵際の強さである。デンプン質の米を食べて、タフさと粘り強さを手に入れたい。

「体力的な面で言いますと、噛むことの大切さがいまいち伝わっていないですわ」
 よく噛んで食べましょうとは口酸っぱく言われるが、アプローチを変えてみてはどうか。

「利き顎って言葉があるけど、右利きなら右で噛みがちで、左利きなら左側で噛む傾向があるんだよね」
 噛まない方は、豊齢線が出来やすい。そして誤解されがちだが、よく噛む顎のほうが小顔になれる。

「お説教くさく言うより、そっちから攻めたほうが効果覿面よね」
 そうした人体構造学的な理屈を添えれば、軟食だけでは駄目だと気付くだろう。

「噛むってのは美容に良いのもそうだが、虫歯予防、集中力アップ、脳機能の活性化、視力の向上も言われてるんだ。体力増進も顕著でさっきの粘り強さと繋がるな」
 これだけの効能があるのにやらないほうが嘘だ。人工的な白い歯を高額で施術しなくても、良く噛むことで再石灰化が起こり、自然な美しい歯へと再生する。

「てっとり早いのはこのスルメだね」
 醤油とマヨネーズを小皿に盛って、メシヤが咀嚼した。ダジャレでもなんでもなく、よく噛む人は物事を噛み砕いて自分のモノにするのが得意だ。

「おっ、俺ももらうぞ」
 イエスの食べっぷりは豪快だ。

「あたしもあたしも」
 酒宴でも始まる勢いだ。

「イカは駄目なんだヨ!」
 裁紅谷姉妹は、厳格なカシュルートを守る。

「それじゃ氷下魚(こまい)は?」
 氷下魚も非常に硬い食べ物だが、世界一硬い食べ物と言われているのは鰹節で、モース硬度8前後にも及ぶ。水晶や翡翠よりも硬いのだ。昔から勝男武士としてありがたがられる。

「これならわたくし達も食べられますわ」
 歯切れもよくなるだろう。

「メシヤは食べるときにいい音がするネ」
 CMの歯タレになれそうな良音だ。

「小さい頃から噛むことだけは厳しく言われたんだよ」
 咀嚼しましょ ねばりましょ 愛すべき夢見人。

「台詞はよく噛むのよねえ」
 メシヤは慌てているためであるが、真面目な話よく噛むTV人は、よく噛んで食べることが防御策となる。
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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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