第89話 本人訴訟

文字数 574文字

「政治家の失言って色々ありますがね」
 こんな切り口の10代がいるのか?

「『この件に関しては、弁護士に任せています』だなんて、政治家失格っすよ」
 立法府の人間がそんなことでどうするんだろうな。

「『法的措置を検討する』ってやつもな」
 自分の言葉で戦えないものかねえ。

「失礼を承知で申し上げますが」
 ちょこんと右手を挙げるキョンコ。

「先輩が法律に詳しいのって、裁判沙汰に何回もなってるからですか?」
 失礼極まりないな。

「口で言っても聞かないやつが多いからな」
 殴るって意味じゃ無いぞ。

「さっきの話で言えば、『法的措置を検討する』って言葉に屈しちゃ駄目なんすよね。自分は何も間違っていないとの信念があれば、そんな稚拙な恫喝には断固として立ち向かわないと」
 勇ましいな。

「裁判は金が掛かるってのでまず諦めるよな。だが、本人訴訟をする人らもまあまあいるんだぜ」
 何を隠そう、俺がそうだ。

「裁判官が批判に晒されることもあるが、彼らは本当に優秀なんだ。訴訟相手が悪事の限りを尽くしてるのに飄々としていたとしても、こちらが緻密に法律構成を立てれば、ちゃんと裁いてくれるもんさ」
 うんうんとキョンコが頷いている。

「ところで先輩。ボクの取っておきのシガールが無くなってたんですが、何か知りませんか?」
 急に用事を思い出した。いつもと違う電車に乗って、どこか遠くへ行こう。






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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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