第32話 コンピューターニカルちゃん

文字数 976文字

「プログラムOKです」
 平成生まれのはずだが。

「わたしのgreat-great-グランマは、明治生まれのコンピューターというあだ名でした」
 ニカルもきっと大好きなのだろう。

「ユアナカードの謀略をなんとかすんでのところで遮断できたな」
 なにを焦ってるんだろうな、政府は。

「話を単純化しますが、神籬(ひもろぎ)さんもいくつかのネットサービスを受けていますよね。それらは個別で異なるIDとパスワードを設定されていると思いますが、面倒だからと一つのID・パスワードに固定しますか?」
 冗談じゃない。

「そんなことをしたら俺のプライべートは筒抜けだ」
 一カ所突破しただけで、本丸まで到達してしまう。

「ですが、ユアナカードの推進者はそれをやろうとしているんですよ」
 その辺の説明はまったくないな。安全の一点張りだ。

「あとは、別々のネットサービスなら一つのシステムがダウンしたところで軽傷だが、すべてがリンクしていたら落ちたときに身動きが取れないぞ」
 これが無ければ、物を買うことも売ることも出来なくなる。

「わたしはその前段階として、プロミネンス禍があったのだと踏んでいます」
 ユアナポイントをもらうためには、ユアナンバーカードの登録が必要だった。

「技術の使い途が悪い方へいってるな」
 現代は情報技術ばかりが脚光を浴びてるが、技術分野はもっと広大なのにな。

「そうですね。水道管を施工する技術のほうが人のためになりますし、命に関わりますよ」
 マリオの映画も大ヒットしたことだ。若者に期待しよう。

「ところでだ。ジャストシステムのソフトがたまに話題にされることがあるだろう? 愛好者だと知れると嘲笑の的になるあれだ」
 使いにくいのは互換性の問題だけで、日本人が使うなら断然ジャストシステムだ。互換性は海外OSが牛耳ってるんだから、ジャストシステムの責任ではない。

「わたしも漢字の使い分けをちゃんとしたいほうなのでATOKのほうが楽です」
 一太郎を口にするのはタブーの雰囲気すらある。こいつは超漢字にも手を出してたな。

「三四郎ってのも遙か昔だな」
 Windows95が分岐点になったのは間違いない。

「花子なんてのもありましたね。日本人向けでしたし、シェアを拡大していたら日本の創作界隈も違った進化を遂げていたかも知れません」
 実に悔やまれる。

 五郎もあったが、なぜか二郎は飛ばされている。



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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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