第43話 保護と反故

文字数 929文字

「先輩も神頼みなんてすることあるんスね」
 なにを薄ら笑い浮かべてんだ。

「おいおい、人を見た目で判断するのはよくないぞ」
 あんな目に遭ったら、信じざるを得ないだろう。

 どうやら、賽銭箱の前で手を合わせていたところを見られたらしい。

「でもひどい話もあるもんですよ。賽銭ドロなんてのは昔からありますが、神社の建物を破壊する不届き者がいたみたいです」
 人間がどれだけ進歩しようが、尊大になっちまったらお終いだ。

「罰当たりなのもそうだが、立派な建造物損壊罪・もしくは器物損壊罪だな」
 ※刑法第260条、261条による。文化財なら、もっと罪が重くなる。

「それで言うと最近お騒がせな連中も、これでしょっぴかれますよね」
 自分から犯罪の証拠動画を上げてしまうのは、どういう心理状況なのだろうか。

「炎上商法なんてものが出来てから、道徳レベルも地の底ですよ」
 本人がビクビクしながらアップしているのならまだ救いようはあるが、なんとも思っていないのならどうしようもない。裁きは必ず下る。

「あとボクがひっかかるのが、込み入った話になった時に『そんなことはどうでもいい』って突き放す発言なんですよね」
 どうでもいいと言ったところで自分の格が上がる訳ではない。どうでもいいと発言する人物が、周りからどうでもいい奴だと思われるのがオチだ。

「三重出身の俺と京都出身のお前にとって、神社仏閣がどうでもいいなんて口が裂けても言えないわな」
 人間の力でできることなど、たかが知れている。かのナポレオンもやれるところまではやって、あとは天に任せていた節がある。

「皇帝ナポレオンは、奥さんを見放したときから運命が変わっちゃいましたよね~」
 そこは俺も同意する。

「伝統的建造物の破壊だけでなく、伝統的行事を無くそうとする動きも俺は好かんな」
「難癖つける人がいるんスよ~」
 ※文化財保護法第195・196条も読まれたし。

 不審火が多すぎるが、不審な間者(かんじゃ)もこれまた多い。

「日本はなにかと目を付けられてますね~」
 誰が言ったか、宝の島である。

「伝統破壊はもっとも簡単に国家を解体する手法だ。急に180度意見が変わったコメンテーターにも、要注意だな」
 文化財保護法違反の文化財とは、伝統的な年中行事も含まれる。




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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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