第52話 十方微塵世界(じっぽうみじんせかい)

文字数 521文字

「ちわ~、宅配で~す」
「はいよ」
 受領のハンコを押す。

「ん? 西本願寺(にしほんがんじ)京子(きょうこ)・・・」
「先輩、それボクのっス!」
 こいつ、職場に配送先を指定するなっての。

「お前、西(にし)って名字じゃなかったの?」
 バツの悪そうなキョン子。

「これはあれだな・・・」
 キョン子がびくっとする。

「二つ名だな? 中二病のお前らしく」
「そそ、そうなんですよ! さすが先輩、よく分かりましたね!」
 んなわけねーだろ。名家だとは聞いていたが、名門中の名門じゃないか。

「でも先輩の名前もそれ本名なんスか? ずいぶんシンプルですよね」
「わけあって(あずま)(ひろし)と名乗っているが、真名(まな)がちゃんとある」
 作品が合流してから、初めて俺の名前が登場したな。

「先輩のは通り名っぽいですね!」
 こいつ、年上をおちょくり過ぎだろ。

「お前には教えてやるけど、俺の名字は東別院(ひがしべついん)って言うんだ。家の事情で伏せてるけどな」
 キョン子はスネかじりだが、俺はスネに傷があるってとこだな。

「お母さんのほうですよね? その名字」
 察しが良いな。

「ああ。親父の名字はとても名乗れないし、東別院も目立ちすぎるから東って称してる」
 妙な縁だな、まったく。

(『先輩のお父さんを知ってます』なんて言いたいけど、やっぱり言えないよね・・・)



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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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