第68話 奥地に遭いますかどうか

文字数 751文字

(デジャヴかしら? なんだか懐かしく感じるわ)

「滝巡りもいいもんだな」
 滝に打たれれば、心頭滅却になるだろう。

「三重っていろんな風景があるよネ~」
 エリは伊賀忍者に興味津々だ。だけど言えずに悶々としている。

「名張の赤目四十八滝って、新日本観光地百選の瀑布部門で第一位に選ばれたこともあるんだよ」
 いまとなっては、いかんせん地名度が足りない。秋の星座にぶら下がって、上から紅葉を見下ろすのも良いだろう。

「もう少し、アクセスが良いといいのですが」
 高速道路を通すルートは、円卓会議で決められる。

「それなんだよね。地図を広げるとさ、国道165号線に沿うように久居・天理間を繋いで、新名神の甲南ICから縦に伊賀・名張を通って166号線まで結ぶと便利だと思うんだけどなあ」
 赤目四十八滝を中心に、四通させる。

「おオ~、十字に赤目が斬ル!」
 忍者マニアのエリは、九字も切れる。

「北伊勢も田舎だけど、ここは一段も二段も田舎ね」
 褒め言葉である。

「ここいらの高校生は、運動能力が頭抜(ずぬ)けてるんだ。日常生活を送ってるだけで、修行になるからな」
 山道・坂道ばかりで、足腰と心肺能力が自動的に鍛えられる。

「忍者の里になったのも頷けますね」
 白馬の常人離れした肉体は、ここで養われた。

「面白い地形だよな。ここを過ぎたら、もう奈良と京都が見えてくる」
 イエスの伊賀越え。ライバルの甲賀は、滋賀県境を挟んで隣同士だ。

「もっと観光アピールが欲しいところね」
 ハートを掴むには、隣接した胃袋を掴むのが近道だ。

「お高くなっちゃうけど、金谷(かなや)の伊賀肉は食べておきたいね」
 割り下を使わないすき焼きが絶品である。

「伊賀の金谷は老舗の旅館みたいなたたずまいね」
「名張の金谷のほうは、レストランだヨ!」

 秘境の旅は、胃袋がひとつではとても足りない。




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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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