第110話 マカロン・ネソス(幸福者の島)

文字数 747文字

「大手通販サイトは確かに便利なんだけどさ」
 こう見えても、マリアの財布の紐は固い。

「5つそこで買っても、5回配送してもらわないといけないってのが、なんかすごくロスに感じちゃうわ」

「それはあるよね。一個欲しいだけでそのためだけに配達してもらうのも、悪い気がする」
 キャンペーンの時の多大な苦労が、ひしひしと伝わってくる。

「いくら金を払っているとはいえ、ジュース一本で呼びつけるってのも気乗りしないな」
 意外なことに、水中だとナマケモノの動きは速い。

「宅配ロボットが悪戯される動画も目にしますわ」
 ロボットも可哀想だが、荷受人(にうけにん)は悲惨だ。

「まとめて配送ってシステムもあるけド、なかなかまとめてくれないよネ」
 出所が違えば、どうしてもそうなる。

「シオンみたいな大型のショッピングモールは、それが出来るんじゃないかな」
 専門店でないと揃わないようなものならともかく、日用品ならシオンで充分である。

「そうだよな。食料品や消耗品の配達は、地域密着型のスーパーのほうが向いてるよな」
 年配の方や移動手段の無い世帯は大助かりである。もちろん、不在の場合もあるだろうから、宅配BOXの設置が必要になってくる。

「スーパーの食材を買うなら商品を1点・2点ってわけじゃないだろうし、何円以上から配達しますっていうふうにすれば、お店側も利益を見込めるんじゃないかしら」
 酒店の御用聞きや出前自体が消滅しつつあるのは、なんだか淋しい。

「高齢で一人住まいの方を見守ることにもなりますし、とても良いことだと思いますわ」
 決して高価でなくとも、食べたいものを食べられる状況は、ゆたかな社会と言えよう。

(鷹山さんはメシヤに後を継いでもらいたいようだが、政治家にならなかったとしても暮らしやすい世の中に変えるのは可能なんだよな・・・)




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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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