第16話 モーニンステーキ食おうよ、二人で

文字数 743文字

「朝っぱらからよく食えるな、白馬よ」
 400グラムはあろうかというサーロインステーキを、ほおばる白馬。

「俺は燃費が悪いんですよ」
 白馬の仕事量からして、これくらい食べないとガス欠になる。

「白馬くん、いる~?」
 応答ボタンを押していないのに、客側からインターフォンの声が入ってきた。こんな芸当が出来るのは・・・。

「オブライエン博士、突然来られたら困りますよ」
 ボスはいつの間にか通信をオフにしていた。

「まあ、良い匂い!」
 飯時に来るのは、マナー違反である。もっとも、白馬の食事時間が規則正しくないせいであるが。

「同じものがありますよ」
 ウエストは絞れているが、太っ腹の白馬。

「悪いわねえ、白馬くん」
 まさか、狙っていたのではなかろうか。

(オブライエン博士、どことなく雰囲気がマリアに似てるんだよな)

 オンボロ倉庫だが、掃除は行き届いている。仕事がマメなだけに、料理の腕も見事なものだ。

「メシヤくんといいコーラーといい、料理男子が多いわね」
 オブライエン考案のメニューも美味そうだ。

「で、用件はなんです?」
 さすがに飯だけ食って帰るほどあつかましくはない。

「ええ」
 よく焼きのサーロインを食べる手を止め、博士が語り出した。

「カスケードシャワーよ」
 ダイヤモンド半導体のカタが着いたかと思ったら、またとびきりのやばい案件が来た。

「オブライエン博士の携わっている仕事は、戦争外作戦(OOTW)でもみ消される話ばかりですね」
 孤島で隔離されるハズである。

「あら、わたしの研究はすべて平和利用のためよ。使う側の問題だわ」
 オブライエンはマーブル模様のラギオールを使い、小気味よく肉の味を堪能した。

 白馬はコンロの調子を訝しんだ。
よく焼きだったハズの松阪牛。ナイフとフォークから、血が滴り落ちていた。
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登場人物紹介

奇特人間大賞・藤原メシヤ。

彼の元には、いつもハチャメチャが押し寄せてくる。

お転婆娘・安倍マリア。

ギャルであり、敬虔なシスター。

メシヤを止められるのは、マリアだけ。

江戸時代から脈々と続く、大手ゼネコンの御曹司、十九川イエス。

メシヤにとって無くてはならない、心の友。

イスラエルからの留学生・裁紅谷エリ(姉)。小柄だがフィジカルお化け。最初は身分を隠していたが・・・

同・裁紅谷レマ(妹)。エリは双子の姉。落ち着いているように見えるが、9マイル先のターゲットを錆びついたマシンガンで撃ち抜ける。

【東洋】あずまひろし。北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーにて勤務。ろくに学校も出ていないが、父親のスパルタ教育により、体だけは頑丈。後輩・キョン子に、なぜかなつかれている。

【西本願寺京子】京都の名門・西本願寺家の長女。学年的にはメシヤたちと同じである。躾の厳しい実家を飛び出し、北伊勢市内のパチンコ店・エンペラーで勤務する。職場の先輩、東洋《あずまひろし》に、キョン子と呼ばれる。どうやらヒロシのことは以前から知っているようだが・・・。

【科納ニカル】かのにかる。科納エレクトロニクスの令嬢。子供向け番組『コンピューター・ニカルちゃん』で一世を風靡。ロンドンインペリアルカレッジを首席で卒業後は、神籬探偵事務所で助手を務めている。

【奈保レオン】なぽれおん。年齢、星籍不詳。メシヤと同じ1年G組に席を並べる。数学、歴史が得意。破天荒(誤用ではない)なメシヤの、良き理解者。

【ジェニー・オブライエン】人類史上最高峰の知性と評される宇宙物理学者。メシヤと日本贔屓。頭脳労働者のためか、結構な大食漢。研究所は大西洋の孤島だが、北伊勢市内にもよく出没する。

【必勝ミドル】ひちかたみどる。雲水翁の内弟子。凡庸な12歳であったが、五大所山の修行でメキメキと腕を上げる。先手必勝をモットーとする。

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