第153話 バズ・ストーリーは突然に
文字数 746文字
夏休みの読書感想文を書いているメシヤ。
「あんたそういうの得意じゃない」
マリアはメシヤの文才を一応認めている。
「メシヤさまはアンケート用紙の記入も早いですわ」
なかなか筆が進まない周囲をよそに、猛烈にペンを走らせる。
「分からないまま時が過ぎるんだよネ」
たぶんもうすぐ、雨もやむだろう。
「読書感想文がバズるなんてのは聞いたことが無いが、ある単語を適切なタイミングで使うと効果絶大なんだろうな」
無名アカウントがある日突然話題を呼ぶことがある。ただしシャドウバンされていては、いくら多くの人が目にして心を動かされたとしても、無かったことにされてしまう。
「『君のために翼になる』ってなんなんだよって言い出したら、文学は死ぬね」
ちょっとでも分からないことがあるとすぐ質問攻めにする。答えをすぐ見る癖が付くと、孤立無援の状態に陥ったとき、なにも出来ずに終了する。
「あらすじを要約するのが批判されたりするけど、中身にほとんど触れずに感想だけ述べる体なら、本を読む必要がないわ」
マリアはビジネス書の類いは読まない。一文一文ひたって読むのが好みである。
(メシヤさまの文面はバズってるどころの騒ぎではないのですが・・・)
「イラスト集よりも漫画のほうが売れるってことハ、みんなストーリーを求めているんだよネ」
とっかかりは目を引く美麗な絵かも知れないが、中身がないのでは人気は息切れする。
内容が面白い動画と再生回数の多い動画は、必ずしも一致しない。動画内で何を喋るか考えるのは、アカウント主が個々で作家になるようなものである。
「よく喋る人だけど、このことは話さないんだってところでもキャラを出せるよね」
雑談で場を和ませたい気持ちがあるなら、あなたはすでにペンを持つ侍だ。