第123話 正政堂々
文字数 821文字
昨今の政治家は、どこかおどおどしている。
「ちょっとでも強硬な姿勢を見せると、すぐさまスキャンダルで潰されるからな」
どこの政党を支持するか以前の問題だな。
「わたしは支持政党がとくにありませんが、与党への批判が国政への実益に適っているように見えません」
漫才のツッコミはボケを活かすが、あれではボケを殺すようなもんだ。
「モンスターカスタマーへの対応を誤ると、尻の毛までむしり取られるぞ」
毅然とした態度をだな。
「神籬さん。わたしもまだ20歳前ですので、そういうワードチョイスはいただけません」
ああ、ヒロシとあんまり変わらないんだったな。
「議員の不逮捕特権はよく知られているが、免責特権もあるからな。もっと自由闊達な議論をやって欲しいもんだ」
どこかへのコミュニティに遠慮して、言いたいことも言えないようじゃ国の舵取りなど出来やしない。
「わたしが腹立たしかったのは、夜の世界の光景を何者かが撮影して公開し、それを政争の具にしようとしたことです」
ニカルは大人の社交場に理解があるんだよなあ。
「なんら犯罪行為ではないよな」
プライベート空間でやるようなことを公の土俵に引っ張り出して是非を問うこと自体、間違っている。
「いち記者が政治家に進退を迫るなんてのは、異常です」
民衆の支持で選ばれた政治家に、その民意を蔑ろにする行き過ぎた行為だ。
「報道だといかにも頼りなくて風采の上がらないように編集されているが、国会中継やノーカットの演説を見ると、イメージががらっと変わるぞ」
悪いのは政治家じゃない、という問題がここで見えてくる。
「そうなんですよね。失脚させるためにありとあらゆる手を打ってきますから、せめて国会の場では悪辣な暴虐に怯むこと無く、国民を導いてほしいものです」
異論は無い。
憲法第51条【議員の発言・表決の免責】
両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。