176 胴体とラファ・Ⅰ

文字数 1,102文字

 どうも、リビングアーマーです。
 今回は胴体だけでお送りしております。

 具体的に言うと、胸部パーツと腹部パーツだな。
 本当はもっと細かく分解されるんだけど。
 幸いそこまでは苔モンスターに引っ張られなかった。

 で、一緒にいるのはゴブリン娘のラファ。
 一緒にっていうか、ラファが俺を着てる状態だ。

 苔モンスターに押し出されて、俺たちは別のフロアに飛び出した。
 苔どもはそこまでは追ってこられないようだった。

 ようやく一息つけた、と思いきや、俺たちが迷い込んだのは洞窟みたいな場所。
 その地面がそこらじゅう水浸しなんだが、これがただの水じゃない。
 触ると溶ける溶解液の池だったのだ。

 硫酸だか塩酸だか消化液だかなんだかわからんが、とにかく危険極まりない。
 そこで、ラファが俺を着て、俺が宙を浮いて移動することにしたのだ。

 俺は他のパーツがどこにあるか探ってみたんだが、全く反応がなかった。
 鎧のパーツ扱いできないくらいバラバラに壊されてしまったのだろうか……。

 仕方なく、次の出口を探してしばらく飛んでいると、

「ねえリビタン。前の方からなんか飛んでくるよ」

 ラファに言われて目を凝らすと、たしかになんか見える。

 ちなみに俺は実際に目があるわけじゃなくて、魔力で視界を得てるって感じだ。
 なので洞窟の暗闇でもものが見える。
 ラファはもともと洞窟暮らしだったのでこれくらいは平気だ。

 ともかく飛んでくるものを見る。

 暗い中でなんか黒っぽいからすごく見づらいな。
 ええとあれは……。

 ――キィキィキィキィ!

 コウモリだ!
 それもものすごい数。

 数えきれないコウモリの群れがこっちに向かってきてる。

「あれはヤバいって! リビタン引き返して!」

 もちろんだ!
 俺は方向転換。
 元来た道を戻る。

 ――キィキィキィキィ!

 ぎゃー!
 後ろからも来たー!

 なんでだよ。
 さっきまでいなかったじゃん。
 どっから湧いたんだ?

 と、文句を言ってもしょうがない。
 どうする。
 どこに回避する?

 別れ道はない。
 地面近くにはコウモリはあまりいないけど、そこは溶解液の海。
 俺は一瞬潜るくらいなら平気かもしれないが、ラファは無理だろう。

 ――キィキィキィキィ!
 ――キィキィキィキィ!
 ――キィキィキィキィ!

 うおおおお!
 迷ってる間に一気に迫ってきた!

 ばし!
 べし!
 ぼす!

 とコウモリの先頭集団が俺にぶち当たる。
 ちょっ、やめ、うわ……ん?

 なんか様子がおかしいな。

「リビタン、なんかコウモリを吸収してってない?」

 うん……俺もそう思う。
 俺に体当たりしてくるコウモリが、鎧の中にどんどん消えてってる。

 なにこれ!?
 どういう現象!?
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