216 言ってる本人はフラグに気づかない

文字数 867文字

 エドが潜んでいる洞窟の中を進む俺とロロコ。

〈洞窟の中は案外普通だな〉

 霊力の密度は濃い気がするけど。
 クーネアさんが言ってた意識の途切れが発生する様子はない――

「――リビたん。リビたん!」

 ――ん?

〈どうした、ロロコ。そんな大きな声出して〉

「リビたん、今急に動かなくなってた」

〈え、マジで?〉

 全然気づかなかった……。
 意識が途切れるのってこんな感じなのか。
 あっけなさすぎてむしろ怖い。

 これはロロコについてきてもらって正解だわ。

〈それにしても、なんか懐かしいな〉

 そんな場合ではないのだが、そんなことを思ってしまう。

 俺がこの世界に転生して、最初に出会ったのがロロコだった。
 いや、正確には盗賊さんだけどね。
 あの人たちとは会話とかしたわけじゃないから。

 ロロコはバカ領主の部下から逃げ回っていて。
 成り行きで一緒に行動することになった。

「うん。リビたんがいなかったら私は生き延びれなかった。感謝してる」

〈それは俺も同じだ。ありがとう〉

 照れくさいな。
 なんだかもうすぐ最終回を迎える漫画かアニメみたいじゃないか。

 でも、ノリとしてはそういう感じなのかもな。
 エドを倒して、ヴォルフォニア帝国をなんとかする。
 そうすれば、この世界の魔王と魔族の問題が片付く。
 世界が平和になる。

 そうなったらちょっと落ち着いて、改めて冒険したりしたいよな。
 成り行きでダンジョンに潜るんじゃなくて。
 装備とかをちゃんと整えてさ。

「私も連れてってね」

〈ああ、もちろんだ〉

 ロロコがいいなら大歓迎だ。

 なんて考えてると。

 ――グルルルルル……。

 洞窟の奥から唸り声が聞こえてきた。

 やがて姿を表したのは犬のような狼のような外見のモンスター。
 洞窟の外にもたくさん出現しているやつだ。
 それが、10体はいるか?

〈ロロコ?〉

「大丈夫。これくらい、私一人でも倒せる」

 頼もしい限りだな。
 よし、それじゃ久しぶりに二人で洞窟攻略と行こうか――

 ――ドスッ。

 不吉な音に横のロロコを見る。

 どこからともなく現れた、槍のような形の触手がロロコの腹を貫いていた。
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