47 洞窟ダンジョン(難しめ)

文字数 1,730文字

 リビングアーマー(右腕だけ)の俺と人犬族のロロコは、洞窟内を歩いてる。
 いや、俺はフヨフヨ飛行してますけどね。

 まー、いつまでもグダグダ悩んでてもしょうがないし。

 幸い、目的だけはある。

 この洞窟に落ちる直前、ロロコがラッカムに、

『帝国でここから一番近い冒険者ギルドに向かう』

 と伝えたのだ。

 まあちゃんと聞こえたかどうかはわからないけどね。
 とりあえず、そこが目標地点ってことで。
 先のことは、着いてから考える!

 あ、ちなみにラッカムってのは、ロロコたちの集落の近くの街の住人。
 で、その街の自警団長をやってる人。
 ロロコたち人犬族にも、いろいろ気を配ってくれてたらしい。

 脱走した人犬族たちは、ナントカの森の北にあるナントカ帝国を目指してる。
 ラッカムなら、彼らをそこに連れていくか、その手配をしてくれるだろうと。
 そういう期待もある。

 そんなわけで、俺たちの目的地は、冒険者ギルドがある街……。

 名前は、ええと……。

〈……なんだっけ〉
「バリガンガルド」
〈そうそう、バリバンバルド〉
「バリガンガルド」
〈ガリバンガッ――〉

 ちくしょう!
 なんで舌もないのにうまく発音できないんだ!

 たぶん、ちゃんと正確に覚えてないからなんだろうな。

 俺の発音って、頭に浮かべた文字が自動で出力される、みたいな感じだから。

「バリガンガルドは、ヴォルフォニア帝国最南端の都市」
〈そうだ、ヴォルフォニア帝国だ〉
「ヴェルターネックの森の手前にあって、森や洞窟ダンジョンで活動する冒険者の拠点」
〈そうだそうだ〉

 ヴェルターネックの森ね。
 その辺は覚えてきたぞ。

 とにかく、そのなんとかガルドに向かいたいわけだ。

 なんだけど……。

〈……また行き止まりだな〉

 これで十回目か?

「十二回目」

 そんなにか……。

 そう。
 この洞窟、やたらに複雑なのだ。

 前にいたところはそこまででもなかったんだけどな。
 後半のは、ワームが掘り進んでできた迷路だったから、ちょっと別だし。

 今歩いてるあたりは、ワームの縄張りってわけでもないっぽい。
 なんか、すごい硬い岩なんだよね。
 これはワームも掘ったりできないだろう。

「ダイヤモンド・ワームっていうのもいるけど」
〈なんかすごそうだな〉
「歯がダイヤモンドだから、硬い岩も掘り進める」
〈マジかよっ!?〉

 そんなのがいるんだったら、ここもその可能性が……?

「それはないと思う」

 ロロコは首を横に振る。

「ダイヤモンド・ワームは帝国の北の土地にしかいない」
〈なら安心だな……〉

 いや待てよ。
 今まで、こんな感じの会話した直後に、モンスターが現れるってパターンあったよな。

〈…………〉

 俺はちょっと停止し、身構える。

 ……なにも聞こえないな。

〈ふー〉
「どうしたの?」
〈フラグなのかと思って〉
「? 旗がどうかした?」
〈いや、気にしないでくれ〉

 どうやら、今回は本当に出てこないらしいな。

〈……って、また行き止まりか〉

 これで十三回目か?
 本当に出口あるんだろうな。

「弱いけど、風が吹いてるから、出口はあるはず」

 それならいいんだが……。

 ――ゴオオオオオオオ。

 ん?

「なにか聞こえる」

 ロロコが犬耳を動かしながら言う。

 俺も聞こえた。
 まさか、やっぱりワームが現れるんじゃ……。

「違う。これは、水の音」
〈水?〉

 ……水だって?
 ……洞窟で?

 そんなの、嫌な予感しかしないじゃないか!

〈逃げるぞ!〉
「どこへ?」
〈どこへって、そりゃ――〉

 えーと……どこでしょう?

 ――ゴオオオオオオオブワシャアアア!

〈ぎゃー!〉

 水!
 それもすごい勢い!

 しかも、俺たちの背後は行き止まり。
 逃げる場所なんかあるか!

〈ロロコ!〉
「ん」

 俺は慌ててロロコと手をつないだ。
 こんなところではぐれたら堪ったもんじゃない。

 そして、次の瞬間。

 俺たちは凄まじい勢いの激流に飲み込まれた。
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