99 なめく~じ~毒を吐いた~ら~

文字数 1,260文字

 どうもリビングアーマーの俺です。
 こっちはゴブリン娘のラファ。

 で、あっちが俺たちに迫る大蛇。
 で、あっちが俺たちに迫る巨大ナメクジ。

 うわああああああ!
 どうすりゃいいんだよ!

 ほぼ垂直に近い洞窟で挟みうちにされてしまった俺たち。

 下からは大蛇の群れが接近中。
 上からは巨大なナメクジが接近中。

 ――ずももももも!
 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 不吉な音の多重奏が焦りを掻き立てる。

 蛇は群れで、ナメクジは単体で洞窟の穴を完全に塞いでいる。

 下に戻れば蛇たちに押しつぶされて圧死。
 上に向かえばナメクジの毒で溶解される。

 行っても戻っても地獄だ。

〈ど、ど、どうする?〉

「うーん……これはもうじっとしてるしかないかな」

 えーーー!
 なんで急にそんな諦めモードなの!?

 いや、たしかに俺も一回死んだ身だ。
 これまでに何度か「まあここで死んでもいいか」って思ったこともある。

 けど、これはなんかちょっと残念すぎる。
 なんとかならないの?

〈くそっ〉

 俺は大蛇の群れに向かってゴーレム腕を射出する。
 ロケットパンチだ!
 ロケットじゃないけど。

 ぼん。
 べん。
 ばん。

 大蛇にぶつかった拳はあっけなく跳ね返された。
 …………。

 仕方なく俺は腕を回収する。

 蛇さんって意外と筋肉質で身体かたいんすね……。

 ――シャーーー!

 うわ!
 ごめんて!
 殴ったのは悪かったって!

 蛇が怒って移動速度を増してきた。
 うー、逆効果だったようだ。

 ちくしょう。
 どうすりゃいいんだ。

 ――ベシャ!

 ん?
 ………のわー!

 上から迫ってくるナメクジが毒を吐きよった!

 俺のすぐ近くの岩がじゅうううう……と煙を噴いている。
 うわー、これけっこうすごい毒なんじゃない?

 ヤバいヤバいヤバい。
 これマジで詰むのでは……。

 ……………………ん?

 なんか、不吉な音の多重奏の片方が小さくなってってない?

 見ると、蛇さんたちが後退していく。
 どういうこと?

「よかった……うまくいったみたいだね」

〈え? なにが起こったの?〉

「蛇はナメクジの毒が嫌いなんだよ。だから引き返したの」

 それ早く言ってくれよー!

 なんかあったな、そういうの。
 三すくみってやつ。

 蛇はナメクジの粘液が嫌い。
 ナメクジはカエルに喰われる。
 カエルは蛇に喰われる。
 ……だっけか。

 けど、蛇がナメクジの粘液を嫌いってのは迷信だったはず。

 この世界では、ナメクジが毒を持ってるから、本当に蛇はナメクジを嫌ってるのか。

 なんにせよ助かった……

 ――にゅにゅにゅにゅにゅ!

 ……助かってない!

 毒を吐いたナメクジは、そのまま迫ってくる。

 蛇を追っているのか。
 俺たちを襲うつもりなのか。
 それはわからないけど。

 とにかくこっちに近づいてくる。

 引き返せー!
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