145 お、お、オーク来い

文字数 1,425文字

 どうも、リビングアーマーの俺です。

 アントンさんに頼まれ、品物を船で運んでポローナニアまでやってきた俺たち。

 あ、アントンさんってのはヴェティアンの大商人だ。
 ヴェティアンは今オークの襲撃を受けている。
 そっちは他の冒険者が退治するらしいんだけど。
 アントンさんは俺たちに品物の輸送を依頼してきた。
 目的地はフィオンティアーナ。
 どうせそっちに戻るからってことで俺たちは引き受けた。

 ……んだけど。

 上陸しようとしたポローナニアの港。
 そこがオークの群れに埋め尽くされていたのだ。

「どどどどどういうことですか!」

 アルメルがパニクって船員を問い詰める。
 船員も困惑した顔で、

「知らねえよ! お前さんがたこそなにか知らねえのかよ!」

 そんなこと言われても……。
 アントンさんの部下の、案内役の男の人はさっき海に飛び込んでしまった。
 泳ぎが相当得意らしく、もう遠くに行ってしまった。

「こっちの町にもオークが出現した?」

 ロロコが淡々と考えを口にする。
 ロロコはどんなときでも落ち着いてるなぁ。

「それにしては、この船に向かってなにか叫んでいるようだが」

 クラクラもわりと落ち着いた口調で言う。
 うん、さすが騎士だ。
 肝が座ってる。

「遠すぎてなにを言っておるかわからんな」

 ドグラも普段通りの口調だ。
 ドラゴン娘が動じるような事態じゃないってことか。

 ……なんか落ち着いてる奴が多すぎて、混乱してる方がおかしい気がしてくるな。

 もう一人、普段通りのやつがいるし。

「船頭どの。もそっと船を岸に寄せられぬか」

 忍者のヒナワがそう言う。

 しかし船員はブルブルブルと頭を振る。

「じょ、冗談じゃねえ! あんなところ近づいてたまるか。このまま引き返したいくらいだ!」

 まあそうだよなぁ。

 それに、あまり近づきすぎるとまたクラクラがオークに見惚れてしまう。
 勢い余って岸に上陸してしまったりしたら面倒だ。

〈やっぱり引き返すべきかな――〉

 そう思ってたところに。

 ――ドガン!

 なになに!?

 ぎゃー!
 船室が吹っ飛んだ!

「た、大変です! 積荷が爆発しました!」

 船員が知らせにくる。

 どういうこと?
 この船、アントンさんの品物しか積んでないはず。
 つまり、爆発したのはその品物ってこと?

 どんな危険物なんだよ!

 ――ブシャー!

 今度はなんだよ!

 吹っ飛んだ船室から、なんか噴水みたいに水が噴き出してきた。
 バシャバシャと俺たちに降り注ぐ。

「なんだ、船底に穴が開いたのか!?

「いえ、船底は無事です。これは積荷から噴き出してます!」

 と船員同士のやり取り。

 たしかに降り注いでるのは海水じゃない。
 けど、ただの真水でもないな、これ。

 なんかちょっとベタベタするし、変な臭いもする。

「これは……まままマズいです! 早く船を沖へ!」

 アルメルが叫ぶ。

 しかし船員は否定する。

「バカいえ。こんな状態で沖に出られるか!」

「でもこのままじゃ……いやーーーーー!」

 アルメルが悲鳴をあげた。

 見れば、岸に群がっていたオークたちが、海に飛び込んでこちらへ泳いでくる。

 うわ、なんで!?

「この水、オークが好きな臭いを混ぜ込んでるんです!」

 なんだってー!?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み