173 兜とロロコ・Ⅰ

文字数 1,324文字

 どうも、リビングアーマーです。
 本日は久しぶりに頭だけでお送りしております。

 うおおおおお!
 全身が苔モンスターに引っ張られてバラバラだ!

〈逃げろー! みんなここから脱出するんだ!〉

 それでも俺は声をあげてみんなに呼びかける。

 俺はバラバラになっても平気だが、みんなはそうではない。
 苔どもが俺の魔力に惹かれて集まってる間に、なんとか脱出してもらいたい。

 しかし……。

「リビたんっ」

 ロロコ!?

 声が聞こえたかと思うと、苔の隙間から手が伸びてきた。
 そして俺(兜)をつかんだ。

〈おいロロコ。なにしてるんだ。早く離せ〉

 苔どもは俺に向かって集まってきてるんだ。
 そんな俺の近くにいたら、苔に押しつぶされちゃうじゃないか。

 しかしロロコは首を振る。

「やだ」

 それどころか俺を抱えて庇うように丸くなる。

 ああもう、お前は……!

 仕方ない。
 俺は自分の周りに放出していた魔力を止める。
 どっちにしろ、兜だけだと術式が不完全だ。
 原初魔法ビームは使えないしな。

 苔の氾濫がおさまった……かな?

 しかしその動きは止まらない。

「うわわ」

〈うおおおおおっ!〉

 俺とロロコは苔の流れに乗せられて、どんどん勝手に移動してしまう。

 上へ登っているのか下へ落ちているのかもわからない。

 前に腕だけの状態で、水の中で似たようなことになったな。
 あのときは腕をスクリューみたいに回転させてなんとかしたんだっけ。

 今はそれもできない。
 兜じゃスクリューにならないし。
 苔の中じゃ回転のしようもないしな。

 ――ももももももも!

 苔はすごい勢いで俺たちを運んでいき、やがて……。

◆◇◆◇◆

「ぷはっ」

 水から上がったときのようにロロコが呼吸した。

 なんとか苔から脱出することができた。
 しかしどうやって?

 俺は兜だけの状態で浮き上がると、俺たちがやってきたほうに視線を向けた。

 そこには壁があって、大きな扉があった。

 両開きの扉はゆっくりと閉まっていくところだった。
 苔モンスターはその向こう側に充満してたが、こっちに侵入してはこなかった。

〈べつのフロアに移動できたってことか〉

 アルメルが言うには、このダンジョンは各フロアにそれぞれモンスターがいる。
 そしてそのモンスターに適した魔力でフロアが満たされるようになっている。

 さっきのフロアは苔モンスター向き。
 ここはそうではないから、苔どもは入ってこなかった。

 そういうことだろう。

 ところでほかのみんなや俺のパーツはちゃんと脱出できただろうか。

 俺は意識の同期を試みる。

 リビングアーマーは、バラバラのパーツそれぞれに意識を持つことができるのだ。
 最近バラバラになる機会が少なかったけど。
 やっぱこれめっちゃ便利機能だよなー。

 …………ん?

 おかしいな。
 意識が同期できない。

 まさか……ほかのパーツはすでにこなごなに砕け散ってしまった?

「リビたん。こっち」

 ん?
 どうしたロロコ?

 ふより、と浮いた状態の兜を回転させて後ろを見る。
 まあ、背後に視界を持たせることもできるんだけどね。
 でもこっちのほうがしっくりくる……ん……だよな…………。

 そこには巨大な鳥のモンスターがいた。

 ――きゃおおおおおおお!
 うぎゃあああああ!?
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