207 クラクラの話

文字数 1,395文字

 ヴォルフォニア帝国の元帝都。
 宮殿から『本拠地』へみんなで移動中。

 話の中心はベルからクラクラに移った。

「リビタン殿が天空塔ダンジョンの中に入ったあと、しばらくしてヘルメス殿が、フリエルノーラ国が帝国軍に包囲されていると教えてくれた」

 そうだそうだ。
 天空塔ダンジョンの倒壊を防ぐため、呼び集めたゴーレム。
 そいつらが、その光景を目撃した。

 ゴーレムの通過で、帝国の進撃は一時的に止まっただろうけど。
 いつ再開されてもおかしくなかっただろう。

「それで、私はドグラに頼んでフリエルノーラ国まで運んでもらった」

 そうか。
 天空塔ダンジョンのてっぺんに設置された装置。
 あれの暴走の影響でドラゴン態になれなくなっていたドグラ。
 けど、俺が天空塔の術式を書き換えたことで、変身できるようになったんだな。

「しかし、あの時の妾はいつもの力を出せなくての。到着には時間がかかってしまったのじゃ」

 とドグラ。
 そういえば……。
 あのときのドグラは体内に苔モンスターが巣食ってしまっていた。
 その増殖を抑えるために魔力の大半を割り振っている状態だったはずだ。

〈マグラじゃだめだったのか?〉

「あたくしは、弱っていた天空塔ダンジョンの機能を補助するのに魔力を消費していましたから。あのときのお姉様より速く飛ぶのも難しい状態でしたわ」

 なるほど。
 そうだったか。

〈え……てことは?〉

 エルフの人たちは?

「私たちが到着したときには、フリエルノーラ国の国民は帝国軍に捕らえられ、連れ去られてしまっていた」

 マジかよ。

「ただ、ゴーレム通過の影響で帝国側の奇襲が完全に失敗し、被害が出る前に何人かが避難できていた」

 おお……!

「おかげで私たちは帝国軍の後を追うことができた」

 本来、捕らえられたエルフの人たちは近くの収容所に一旦入れられるはずだった。
 しかしそれもゴーレムに破壊されてしまった。

 ……そう言えば途中でなんかぶっ壊した記憶があるな。

 それで帝国軍は仕方なく、エルフを直接帝都へ連れて行くことにした。

 クラクラとドグラはそれを追いかけた。

〈その途中でベルのゴーレム軍団に行き合ったのか〉

「ああ、そうだ」

 ベルのゴーレム軍団は、エルフを移送する帝国軍を襲っていたらしい。

「おそらく、帝国の兵士を目にしたことで、帝国を倒すという僕の意思が制御できなくなってしまったんでしょうね」

 とベル。

 帝国兵は大量のゴーレム軍団に対抗できず、散り散りになってしまった。
 そこで止まってくれればいいのに、残念ながらそうはいかなかった。
 一度戦い始めたゴーレムは、完全にベルの制御から外れてしまった。

 ゴーレム軍団はエルフの人たちや近くの村を襲い始めた。

「仕方がないので、妾が倒してやったのじゃ。全力は出せんかったので、一体ずつちまちまとな。面倒じゃったわ」

 とドグラ。

 いや、むしろ炎の一吐きで一掃とかしなくてよかったよ。
 ついでにエルフやベルや周りの村人も燃やされてたかもしれん。

「まあ、そんなわけで、僕のゴーレム軍団は見事バラバラになってしまった、というわけです」

 それは残念だったが、まあゴーレムが暴れ続けるよりはマシだろう。

〈で、エルフの人たちも無事救出できたってわけか〉

「それが残念ながら、そうはならなかった」

 え、なんで?

「大陸が真っ二つに割れたのだ」

 なるほど。
 大陸が……。
 真っ二つに……。

 ………………は?
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