243 元の世界へ

文字数 1,234文字

 巨大ロボットみたいな形に変形したガルシラ。
 その主砲から放たれた『浄化砲』
 その眩い光が辺り一面を真っ白に染める。

 その圧力のようなものは俺やロロコにもぶつかってくるが問題ない。

 これは魔族の魔力に影響を与えるもの。
 俺たちには特に効果を及ぼさない。

 でも、エドとクーネアさんにとっては大問題だ。

「ああああああっ!」
「くっ……うぅうう!」

 四方八方を飛び交う白光を避けるすべはない。
 二人は全身に光をぶつけられ、苦しげな声を上げる。

 しかしそれもすぐに収まった。

 光が消えた後に現れたのは、エドと、元の姿に戻ったクーネアさんだ。

「ああ……ああああ、ああああああ!」

 エドは自分の手のひらを見て驚愕の声を上げる。
 そこにあった魔王の肉片が消え去っていたからだろう。

「よくも……よくもよくも! どうしてくれる!? これでは……俺の野望が! 元の世界に君臨することができない! ああああ!」

「エド様……ひゃ!」


 絶望的な声を上げるエド。
 彼を支えるクーネアさんがバランスを崩す。

 魔王の力がなくなったので空に浮いていることができないのだ。

 このままでははるか下の水にドボン。
 水面に叩きつけられた衝撃で死んでしまう。
 なにしろ今や二人ともただの人間だからな。

 けど、もちろんそうはさせない。

 俺は二人に両手を向ける。
 そして回帰魔法を発動させる。

 因果を操る魔法。
 異なる世界を渡ることすら可能にする力。

 そう。
 元の世界に帰還するだけなら問題ないのだ。

 なにしろ、ヘルメスさんはエドと俺をこの世界に召喚したくらいだしな。
 それと同じ力を俺は持ってるわけだから。

 問題なのは『魔王の力を持って』世界を渡ること。
 その膨大な魔力の分だけ、ゲートは大きくしなきゃいけない。
 そのせいでこの世界の魔力を全部消費することになってしまう。

 だったら、魔王の力はこっちに置いていかせればいい。
 元の世界に帰りたいなら帰してやるさ。

 一つ問題は、クーネアさんはどうなのかってことだけど。

「………………」

 クーネアさんは俺の方を見ると、笑みを浮かべて頷いた。

 ……よかった。

 だったら問題ない。

 俺は回帰魔法を放つ。

「や……やめろやめろやめろ! これじゃ意味がないんだ! このまま戻ったらまたただの社畜じゃないか! あんなやつに馬鹿にされてこき使われるなんてもう嫌だ! 嫌だあああ!」

 …………。

 エドの悲痛な叫びが響く。

 え、そういう理由?
 魔王の力を元の世界に持っていきたかったのは社畜脱却が目的だったの?

 ちょっと可哀想になったが、途中で止めるわけにもいかない。

 俺の手のひらから放たれた回帰魔法の光がエドとクーネアさんを包み込む。

 出現する巨大な『穴』。
 巨大な生物の口腔を思わせる真っ黒なそれが光を飲み込み。
 そしてすぐに消失する。

 後にはなにもない空が残る。
 二人の姿もなくなっていた。

「終わったの……?」

 ロロコの問いに俺は頷く。

〈ああ〉

 なんかすごいあっけなかったけどな。
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