146 オークには勝てなかったよ……(船が)

文字数 1,939文字

 どうも、リビングアーマーの俺です。

 ヴェティアンの大商人アントンさんに頼まれ、荷物を運んでいる途中。
 船でポローナニアに上陸しようとしたんだけど。
 ポローナニアの岸はオークで埋め尽くされていた。

 しかも突然積荷が爆発!
 中の水が噴き出してしまう。
 船は大破? 中破?
 船底に穴は空いてないらしいけど、見た目的にはいつ沈んでもおかしくなさそう。

 しかもオークたちが泳いで船に迫ってくる。
 積荷から噴き出した水に、オークが好きな臭いを混ぜ込んであるらしい。

〈どういうことだ? たまたまそういう品をアントンさんは帝国に依頼されてたのか?〉

「たぶん、違うでしょうね」

 だよねー。

 だってさっき、案内役の男の人が海に飛び込んで逃げてったけどさ。
 そのとき『悪いなー!』って叫んでたもんね。
 もう確信犯だよね。

 あ、確信犯ってこの使い方間違ってるんだっけ?
 いやそんなことはどうでもいい。

 今はそれよりオークだ。

「イイニオイガスル」
「メシカ? メスカ?」
「トニカクウバエ!」

 うわわわ!
 乗り込んできたぞ!

「おいあんた! 危ないぞ!」

 船員が叫ぶ。
 見れば、クラクラが剣も抜かずオークの方へフラフラ歩いていく。

 そうだった。
 エルフにはオークの催淫効果が発動してしまうんだった。

〈アルメル、クラクラを頼む!〉

「は、はい」

 よし、これで大丈夫。
 さてと。

 俺は船の側面へ走っていき、乗り込んでこようとするオークを殴り飛ばす。

「グオ!」

 悲鳴を上げて落ちていくオーク。

「ファイア!」

「アヂイ!」

 ロロコの炎魔法が海面を走る。
 あぶられたオークたちが慌てて引き返す。

 シュンシュンシュン!

「グワ! ナンダ!」

 ヒナワが音もなく飛び回り、オークたちに手裏剣を投げつける。
 オークたちは腕を押さえながら落ちていく。

 ……ん?
 あれ?
 ドグラはどうした?

「ドグラさん、どうしました?」

 アルメルの声に目を向けると、ドグラが苦しそうにうずくまっていた。

「すまぬ……この臭い……すごく苦手なのじゃ……」

 どういうことだ?
 オークは好きな臭い。
 ドラゴンにとっては嫌いな臭いってことか?

「だめ、だ……人化が解けてしまう……我は一旦、去るぞ……」

 そう言うと、ドグラは光を放ちながら宙へ飛ぶ。
 次の瞬間、船の上空で彼女はドラゴンの姿に戻っていった。

「ぎゃー! 突然エンシェント・ドラゴンが出現したー!」
「もうダメだー! 俺たちここで死ぬんだー!」

 パニックになる船員たち。
 まあそりゃそうだ。

〈あの、安心してください。あのドラゴンは味方です〉

「嘘つけ! ドラゴンが人間の味方なわけあるか!」

 一斉に叫ぶ船員たち。
 気持ちはわかる。

 けど、ドグラは具合が悪そうにフラフラ陸地へ飛んでいった。
 ついでにしっぽで、岸にいるオークたちを薙ぎ払ってくれた。

 しかしオークはなかなか怯んでくれない。
 どんどんどんどん船に取り付いてきて、こっちの手が足りなくなってきた。

 そして。

 バキバキバキ!

 下の方で不吉な音が聞こえてきた。

「おい! オークが下から船底を破壊してきてるぞ!」

 うわ!
 マジかよ!

「くそ! もうダメだ! 全員海に飛び込め!」

 船員たちは即座に判断し、海に飛び込んでいく。

「ほら、あんたも鎧なんか脱いで早く逃げろ!」

〈いや、俺は……〉

 脱いだら中身ないんだよ!
 しかしここで正体をバラしたら、この人たちますますパニックになるだろう。

 仕方ないな……。

〈俺は、みんなが逃げるまでオークを食い止めます。この鎧はすぐに脱げるんで大丈夫です〉

「そうか……? そういうことなら頼るけど、逃げ遅れるなよ?」

〈はい、ありがとうございます〉

 俺は頷きながらオークに右ストレート。

 船員は海に飛び込んでいく。

〈えーと、この中で泳げないやつっていたっけ?〉

 ロロコ、アルメル、ヒナワは大丈夫っぽい。

「クラクラさんはわかりませんけど、この調子だと……」

 そうだった……。
 クラクラは「オーク、オーク……」と呟きながらはあはあしてる。
 俺の話聞いてない。

 だんだん症状が重くなってないか?

〈よし、じゃあクラクラは俺が水面を飛んで運ぶ。みんな、ついてきてくれ〉

 みんな頷く。
 よし、じゃあ行こう。
 
 俺たちは海に飛び込む。

 その直後、船は大量のオークに取り付かれ、あっけなく沈んでいった。

 あーあ……。
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