226 脱出と逃走

文字数 966文字

 まあ今さら洞窟が崩れたくらいで危機に陥る俺たちではない。
 軽く魔力を放出する程度で、岩は全部俺たちを避けて落ちていく。
 周りにどんどん積み重なっていくけど、焦る必要はない。

 崩落が落ち着いてから、俺とロロコは洞窟から脱出した。

 脱出も簡単だ。
 自分たちを魔力で覆いつつ、魔力を放出して岩を吹き飛ばせばいい。

 ただ、勢いが強すぎると周りに迷惑をかけるかもしれない。
 なので威力を抑えるのがちょっと大変だった。

 それでちょっと時間はかかったけど。
 なんとか二人で出てくることができた。

「リビタン殿!」

 クラクラが俺たちを見つけて駆け寄ってきた。

「ロロコ殿はどうされた!? それにこの魔物は……霊獣?」

 え?
 あ、そうか。

 俺は隣の炎に包まれた狼を示して言う。

〈これがロロコだ。焔狼族とかいうのの先祖返りらしい〉

「なんと!?」

 目を丸くするクラクラの前で、狼は炎を消してロロコの姿に戻った。

「あ、戻れた」

 どうやら自分の意思で変身できるわけではないらしい。
 そのうちできるようになるのかもしれないけど。

 それより今は状況の把握だ。

 山の形が大変貌してるな。
 っていうかもう山がないね。
 全部が崩壊して、その上に生えていた樹々もめちゃくちゃになってしまっている。

〈ほかのみんなは? それにエドとクーネアさんは?〉

「やはりあの異形の女がクーネア殿だったのだな……」

 クラクラはそう呟く。
 どうやらエドたちと遭遇したらしい。

「……皆は無事だ。今は怪我人がいないかを手分けして確認しているところだが、おそらく大丈夫だろう。崩れた山の中まで分け入っていった者はいなかった」

〈それはよかった……エドは?〉

「あやつらは突然現れたかと思ったら、謎の魔法攻撃で山を破壊してから、また姿を消した……どこに行ったかはわからぬ……」

 クラクラはすまなさそうに言うが、捕捉するのは無理だっただろうな。
 なにしろ転移魔法を使ったっぽいのだし。

 俺はふたたび魔力を追って、エドたちの行方を追おうとする。

 しかし、その作業はすぐに中断させられてしまった。

「うわあああ!」
「なんだあれ!」
「なんで突然……魔族の群れが!」

 あちこちから悲鳴が上がる。

 みんな空を見上げていたので俺もそちらを見てみる。

 真っ黒な雲みたいなものが迫ってくる。

 それは――無数の魔族たちだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み