178 胴体とラファ・Ⅲ

文字数 890文字

 どうも、リビングアーマーの俺です。
 胴体パーツだけの俺を着ているのはゴブリン娘のラファ。

「うわー!」
〈ぎゃー!〉

 二人で吹っ飛んでる最中です。

 ってその原因は俺なんだけどね。

 コウモリの群れを吸収したと思ったら吐き出した俺の身体。
 その後なんかコウモリの魔力だけが残ってる気がした。

 それを鎧に刻まれてる術式に流したら風魔法として放出されてしまったのだ。

 あ、一応確認しておくと、この鎧はマジカルアーマーってやつだ。
 ポローナニアでもらったんだけど、元は遺跡からの出土品。
 表面にエッチングっていう技術で模様が描かれてる。
 この模様が全部、魔法を発動するための術式になっているのだ。

 元々は空気中の魔力を活用して魔法を発動する仕様だ。
 だが、俺の身体パーツになったことで、リビングアーマー化した。
 結果、この鎧自体が魔力を有することになった、というわけ。

 今はそこにコウモリの魔力も混ざってる状態、ってことになる。

 って、そんな分析はいい。
 それよりこれ、どうすれば止まるんだ?

 ……魔法、止まれ!

 あ、止まった。

 吹き出していた風が収まり、俺はようやく空中に静止することができた。

〈ふう……〉

「ね、ねえ! なんだったの今の!?」

 驚いているラファに、起こったことを説明する。

「ふーん……わけがわかんないね」

 まったくだ。
 アルメルやドグラあたりならなにか知ってたかもしれないけど。
 ロロコかクラクラでも、魔法使えるからなにかわかったかもしれない。

 ん?
 じゃあラファだけか、なにもわからなさそうなのは……。

「なんか失礼なこと考えてない?」

〈気のせいだ〉

 俺は即座に否定する。

 冒険書があればステータスをチェックできたんだけどな。

 腹部分に入れていたはずの冒険書。
 あれも、混乱の中でどこかに行ってしまっていた。

 あれがあればパーティメンバーと通信も可能だったんだけど。

 まあないものは仕方ない。
 コウモリの群れもいなくなったことだし、移動しよう。

 と、フヨフヨ浮きながら洞窟を進んでいくと、扉があった。

 別フロアに通じる出口だろう。

 俺たちはそれをくぐり抜けて洞窟を脱出した。
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