160 緑色の恐怖

文字数 1,352文字

 どうもリビングアーマーの俺です。

 突然モンスターに襲われたフィオンティアーナの街。

 俺たちはそれに対処するべく街の南側に向かう。

 俺。
 ロロコ。
 クラクラ。
 一旦人間の姿に戻ったドグラの四人である。

 避難する住民たちをかき分けて現場に向かう。

〈うおっ〉

 なんだこれ。

 一面緑色だ。
 地面も建物も、町中が緑色に覆われていた。
 しかもその面積はすごい勢いで増殖している。

 なんかの植物みたいに見えるけど、なんだこれ。

〈これ……魔物なのか?〉

「見たことない」

 俺の言葉にロロコは首を横に振る。

「私もこのような魔物は知らないな」

 クラクラもそう答える。

 ってことはこの地域だけに生息している珍しい魔物ってことなんだろうか。

「我も知らんぞ。なんじゃこいつ」

 ドグラも?
 数百年を生きるエンシェント・ドラゴンが知らないってどんだけだよ……。

 しまったな。
 ラフィオンさんに、どういうモンスターが出現してるのか聞いとけばよかった。

「ふん。面倒だのう。こんなもの、焼き払ってしまえばなんでも一緒じゃ」

 ちょ、ドグラ!?

「ファイア」

 ごお!
 とドグラの手から炎が放たれる。

 すごい火力だ。
 ロロコの火魔法の百倍はありそう。

「むー」

 ってロロコはなんでちょっと不満そうなんだよ。
 ドラゴンに張り合えるわけないだろ、普通は。

 ドグラの火魔法が緑色の謎生物に触れる。
 緑は嫌がるようにちょっと逃げたが、炎はそれより早く広がっていく。

「わはははは! 燃えろ燃えろ! 消し炭になるのじゃ!」

 ドグラ……お前。
 そういうとこだぞ、厄災とか言われて怖がられるのは。

 しかし今回は恐れられることはなさそう。
 逆に感謝されるかもな。

 緑の魔物はすごい勢いで燃えていく。
 あっという間に焦げくさい臭いがあたりに漂う。

「おお」

「すごいな」

 ロロコとクラクラも感心した声。

 よし、これなら——ぬわ!?

「なんじゃ!」

 ドグラの火魔法に燃やされた緑の魔物。
 しかし、まだ火に炙られていなかった場所の緑が一気に増殖した。
 そいつらが燃やされた部分も覆い尽くして、あっという間に元の面積を取り戻す。
 それどころか、さっきより増殖速度を上げてきた。

「だめでーす! そいつに魔法を使っちゃいけませーん!」

 ん、アルメル?

 見れば、ラファがアルメルを背中に抱えてこっちに走ってくる。

〈どうした? 怪我でもしたか?〉

「いえ、こっちのほうが早いので……」

 ああ、そういうことか。

 二人は街にラファの義手を探しに行ってたはずだ。
 魔物出現の報を聞いて応援に駆けつけてくれたのか。

 ラファの義手はまだ見つからなかったのか、彼女は隻腕のままだ。
 それでよくアルメルを抱えて走ってこられたな。

「魔法を使うなとはどういうことじゃ」

 とドグラ。

「あれは、マースモースっていう魔物で……空気中の魔力を吸って成長するんです」

 魔力を吸って……。

「なるほど」

 とクラクラが頷く。

「ドグラの魔法の炎ではダメージを受けるが、その際に発生した魔力を吸って、他の部分が成長してしまっているというわけか」

 え、なんだそれ。
 じゃあどうやって倒せばいいんだ?

 あんなの物理攻撃でどうにかできそうにもないし。

「方法は一つしかありません」

 とアルメル。

「全体に、魔法攻撃をいっぺんに当てるんです」
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