219 回復魔法

文字数 977文字

 触手に腹を貫かれ連れ去られたロロコを追ってきた俺。
 広大な空間に巨大な肉塊があって、そこにエドが立っていた。

 彼の手前には、ロロコがぐったりと横たわっている。

〈ロロコを離せ!〉

 俺は声をあげ、ロロコに向かって進んでいく。

 肉塊から伸びる触手がそれを阻もうとしてきた。

〈邪魔だ、どけ〉

 さっきまで遭遇した魔物よりは多少強いようだ。
 だが、今の俺の敵ではない。

 俺が魔力を帯びた腕を一振りすれば、触手は簡単に消し飛んだ。

「素晴らしい! 魔王の片鱗を相手にそこまでとは。強くなりましたね」

 エドがなんか言ってるが無視だ無視。

 それよりロロコを助けなきゃ。

〈ロロコ、大丈夫か!?〉

「リビたん……」

〈無理するな。いますぐ助けてやる〉

 とはいえロロコは大ピンチだ。
 腹には大穴が空いていて。
 今も血がダクダクと流れ出している。

 外に連れ出している余裕はなさそうだ。

「ここは回復魔法でもかけるしかないのではないでしょうかね?」

 うっせえなぁ!
 こんなことした本人に言われたくねえんだよ!

 エドをぶっ飛ばして黙らせたいが、そんな時間も惜しい。

 エドの言う通りにするみたいで癪だけど。
 ここは回復魔法しかないか。

 …………回復魔法?

 俺、そんなの使ったことないよ!

 いや、待て。
 落ち着け。

 この大陸中の魔力を掌握したリビングアーマー。
 その俺が、この大陸に存在する魔法を使えないなんてことはないはずだ。

 そうだ……記憶の中にあるぞ。

 天空塔ダンジョンと接続したとき。
 俺に流れ込んできた膨大な術式の中に、回復魔法の術式があったはずだ。

 ……………………これだ。

 よし!

 俺はロロコに手をかざす。

 そして思い浮かべた術式を空気中に構築し、そこに魔力を流していく。

 ちなみに、大抵の魔法使いはこんなふうにして魔法を使うらしい。
 頭の中にある術式を空気中に思い描くのだ。
 クラクラのように呪文を唱えれば、より複雑な術式も描くことができる。

 ま、俺は正式に学んだわけじゃないので自己流だ。
 呪文も知らん。
 けど、これで問題ないはずだ。

 光が溢れ。
 ロロコに降り注ぎ。
 腹の傷が回復していく。

「リビたん……これは……?」

〈もう大丈夫だ。少し休んでろ〉

 俺はそう声をかけてから立ち上がった。

 そして、笑みを浮かべて俺たちを見ているエドに対峙した。

〈ちょっとこいつをぶっ飛ばしてく〉
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