61 冒険者ギルドへ行こう!

文字数 3,119文字

 バリガンガルドの街に入った俺、ロロコ、クラクラの三人。

 俺たちはまず、路地裏に入った。
 クラクラが、身につけていた鎧=俺を脱ぐためだ。
 ちなみに、俺の意思でパーツを動かせるので、普通の鎧を脱ぐよりだいぶ楽だと思う。

「うまく街に入れたな」
〈ああ、助かったぜ〉
「それで、これからどうするのだ?」

 クラクラに問われ、俺とロロコは顔を合わせる。

 ええと、そもそも俺たちの目的は――。

「冒険者ギルドで、リビタンの鎧を手に入れる」
〈そうだそうだ〉

 兜だけになってた時、そんな話をしたな。
 冒険書をロロコのものってことにして、ギルドで借り受けられるとかなんとか。

 けど、今の俺は全身鎧を手に入れてしまったからな。

 で、もう一つの目的は、自警団長のラッカムさんと合流することだ。
 ラッカムさんには『帝国で一番近い冒険者ギルドに向かう』と伝えた。
 つまり彼も、このバリガンガルドのギルドに向かってくれてるはず。

〈よし、じゃあ冒険者ギルに行こう〉
「では自分と同じだな」

 クラクラが歩き出した。

〈場所わかるのか?〉
「ああ。以前ここに来た騎士団の仲間に聞いてある」

◆◇◆◇◆

 というわけで、やってきました冒険者ギルド!

 メインストリートを歩いて行った正面に構える、でかい建物だった。
 中も明るくて綺麗な雰囲気だ。
 正面にカウンターがいくつか並んでいる。
 右手には酒場かカフェか、そんな感じのコーナーがある。
 左手には掲示板があって、冒険者たちがたくさんいた。

 クラクラはカウンターの一つへ向かった。
 俺たちはとりあえず後ろから眺めていることにする。

「冒険者登録を行いたいのだが」
「かしこまりました」

 受付の女性が笑みを浮かべて答える。
 女性っていうか、女の子……というか子供みたいだな。
 背が低くて、多分台かなんかに乗ってる。
 そうじゃないと、カウンターから顔が出ないだろう。
 しかし、表情というか、佇まいは大人な雰囲気がある。

「あれはドワーフ」

 ロロコが言った。
 なるほど、もともと小柄な種族なんだな。

 ドワーフの受付嬢は、クラクラにいろいろ説明する。

「冒険者登録には、5以上のスキルポイントと、レベル20以上の冒険者の紹介状か魔物の討伐証明部位5つが必要となります」

 そういや、そんな話をロロコとしたことがあったな。
 俺のステータスを例にすれば――

『スキル:霊体感覚+3、霊体操作+5、霊体転移+2、霊体分割+1』

 ――俺のスキルポイントは11だ。
 おお、俺も冒険者になれるな。

 ただ、紹介状なんてもらえる当てはない。
 モンスターを倒してこなきゃいけないな。

 クラクラは受付嬢に紹介状を渡す。
 受付嬢がそれを開封して確認した。

「問題ありませんので受理いたします。次にスキルポイントを確認させていただきます」
「どうするのだ?」

 受付嬢は、カウンターに占い師の水晶玉みたいなものを置く。

「こちらに手をかざしてください。スキルポイントが5以上あれば発光します」
「なるほど」

 クラクラが両手を水晶玉に近づけると、玉は淡く光を放った。

「はい。問題ありません。それでは、こちらの紙に必要事項をご記入ください」
「承知した」

 クラクラはペンを走らせる。
 名前とか出身地とかを書いてるのかな?

「これで良いか?」
「はい、ありがとうございます。これで手続きは完了です」

 受付嬢はクラクラに腕輪を差し出した。
 前に、ロロコを追っていた男たちが持っていたのと同じものだな。

「こちらが冒険書の腕輪です」
「ありがとう」
「動作不良などがあった場合は交換いたしますので、すぐにお持ちください」
「承知した」

 クラクラは腕輪を受け取った。
 そして後ろで待っていた俺たちに頭を下げてくる。

「リビタン殿、ロロコ殿。そなたたちのおかげで無事、冒険者となることができた」
〈そんな、俺たちは何も〉
「こっちも助けられた」

 ロロコの言う通りだ。
 クラクラと会ってなければ、俺たちはまだダンジョンをウロウロしてたかもしれない。

 と、そうだそうだ。

〈あの、すみません〉

 俺は冒険書(腕輪じゃなくて本のやつ)をカウンターに置いた。

〈これって、腕輪と交換することできるんですか?〉
「これは……第一世代型の冒険書ですね。あなたが使っているのですか?」
〈まあ、一応〉

 俺は、行倒れた冒険者の持ち物を使っていることを簡単に説明した。

「あなた自身は、冒険者登録はされていないのですね?」
〈はい〉
「うーん……」

 受付嬢は、小首を傾げてちょっと考え込む。
 ちょっと早まったかな?
 素性とか聞かれたらどうしよう……。

「申し訳ありません、前例がありませんもので。ちょっと上のものに確認してみます」
〈すみません〉
「カウンターの近くでお待ち下さい」

 そう言って、受付嬢は、奥のドアから出て行った。

〈悪い、なんか時間がかかりそうだ〉
「なに、かまわないさ」

 クラクラは軽く頷く。

 ロロコは、カウンターから離れ、掲示板の方へいく。
 俺も見てみるかな。

〈…………〉

 見てみたけど、なにもわからんな……。

 言葉は通じるけど、相変わらず文字は読めない。
 どういう理屈か分からないけど、そういうことになってる。

 掲示板に貼られてるのは、冒険者への依頼とか、冒険者同士の連絡とかのようだ。

「ラッカムのメッセージはない」

 ロロコが一通り見渡して言う。

 ってことは、あの人はまだこの街についてないのかな?
 そうなると、しばらく滞在して、彼が到着するのを待つのが得策だろうか――。

「お待たせしました」

 と、ドワーフの受付嬢が、わざわざ俺たちのところまで来てくれた。

「ええとですね――」

 と、彼女が説明しようとした時だ。

 ――どごごごごごごごおおおおん!

 激しい揺れがギルドの建物を襲った。

「地震か!?」
「ただの揺れじゃねえぞ」
「魔響震も混ざってやがる!」

 周りの冒険者たちが声をあげる。

 魔響震――この世界の空気中に満ちている魔力の揺れのことだ。
 それと、普通の地震が同時に起こっているらしい。

 揺れは収まるどころかどんどん激しくなる。

「はわわわわわ……!」

 受付嬢がオロオロと両手を地面に着いた。

 クラクラが駆け寄ってくる。

「危険だ。一旦表に出よう」
〈ああ、そうだな〉
「わかった」

 普通の地震でも、それが鉄則だもんな。
 押さない、走らない、喋らないで――くっ!?

〈ぐぁ――!?〉

「どうした、リビタン殿?」

〈わかんねぇ……なんか急に頭が痛くなって……〉

 頭が痛いってなんだ?
 俺の頭はからっぽだぞ?
 そもそも、痛いなんて感覚は、リビングアーマーになって初めてだった。

 揺れはどんどん激しくなる。
 地震も、魔響震もだ。
 ギルドは次第に混乱に支配されていく。
 冒険者たちは、我先に出口へと駆け出した。

「おい、邪魔だぞデケエの!」

 その一人にぶつかられて、俺は倒れる。
 そのまま、鎧のパーツがバラバラになってしまう。
 おかしいぞ。
 鎧がうまく操れなくなってる。

 やばい……。
 元にもどさ……なきゃ……。

 けど、意識が薄れて……。

 揺れが大きく……。

 頭が割れそう……。

 ――そして、俺は気を失った。
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