20 コードレスバンジィィィィィィィィィィィィィ!

文字数 1,562文字

〈ひょわああああああああああ!〉
「…………」

 毎度おなじみ、悲鳴を上げてるリビングアーマーは俺です。
 無言なのは、犬耳っ娘のロロコ。

 巨大コウモリの巣に飛び込んでしまった俺たち。
 今、そのコウモリたちから逃げてるところだと思うじゃん?

 違うんだなぁ。
 もう、それ以前の問題。

 俺たちは洞窟の中を落下していた。

 巣に飛び込んだら、地面がなかったんだよね。
 正確には、はるか下にある……と思う。

 なんで自信なさ気なのかというと、地面が見えないからだ。
 なんか、霧がかかってて、下がどうなってるのかわからん。

 そこを、俺とロロコは落ちていく。

 ――ギエエエエエエエエ!
 ――ギュエエエエエエアアア!
 ――ギョアアアアアアアアアアアア!

 あ、これは俺の悲鳴じゃないです。
 巨大コウモリたちの鳴き声。

 そう。
 俺たちを追っていたコウモリと、巣にいたコウモリ。
 合計十匹くらいが俺たちを追って降下してきてるのだ。

 ――シュ!

 と、コウモリの羽についた巨大な爪が俺たちを襲う!

 あっぶねー。
 いま普通に俺の頭に刺さるとこだったぞ。

 ――シュ!
〈のわ!〉
 ――ヒュ!
〈とりゃ!〉
 ――ヒョ!
〈おりゃ!〉

 どうやら、巨大コウモリたちは、空中で細かい動きをするのが苦手らしい。
 さっきから俺とロロコを狙ってくるが、なかなか当たらない。
 まあ、当たったら困るけど……。

〈この下はどうなってるんだろう……?〉
「たぶん、とげとげ」
〈トゲトゲ?〉

 なにそのちょっと可愛い響きだけど実際は超怖そうな感じ。

「プテラマウスは獲物を巣におびき寄せる」
〈なるほど。俺らはまんまとそれをやられたわけか〉
「で、獲物が落ちて串刺しになったのをむしゃむしゃする」
〈なるほど……〉

 って落ち着いてる場合か!

 このままじゃロロコは間違いなく死ぬ。
 俺だって穴だらけだ。
 冗談じゃないぜ。

〈――そうだ! 魔法でなんとかならないのか? 風の魔法とか〉
「むり」
〈な、なんで?〉
「私、火属性魔法しか使えない」

 そうだったの!?

 いや、まあたしかに。
 一度もロロコの魔法について詳しい話なんかしてなかったな。

「あ、でも」
〈な、なんだ!?〉
「なんとかなるかも」
〈マジで!?〉
「つかまって」

 言われたとおりに、俺はロロコにしがみつく。

 情けないとか言うな。
 いま俺にできることはなにもないんだよ!
 別の言い方をすると、適材適所ってやつ!

 霧の中を突っ切って落ちていく。
 視界がきかないからか、コウモリたちの攻撃もいったん止んだ。

 そして、霧が晴れてくると、ようやく、地面が見えてきた。
 地面っていうか、針の山?
 ロロコの予告したとおり、底は本気でトゲトゲだった。

 刺さる!
 刺さるよ!
 ロロコさん、まだですか!?


「フレイム!」


 叫び声と同時に。
 巨大な炎が出現。

 前に大グモを倒したファイアが火の玉だとしたら、こっちは火の奔流といった感じ。
 地面に向かって、ものすごい勢いで炎が噴き出していく。

 その勢いで、俺たちの落下速度が弱まった。

〈お、おお……!〉

 しかも、炎のおかげで、矢のように鋭いトゲトゲが溶けてクニャリと折れ曲がった。
 そこに俺たちはふんわり着陸。

 い、生きてる……。

 よく見ると、トゲトゲは光沢のある物質でできている。
 天然のガラス?
 そんなものあるのかな?
 まあ、異世界だしな。
 そういうのもあるかもな。

 なんて、珍景に見とれてる場合じゃない。

 ――ギエエエエエエエエエエ!

 巨大コウモリたちが追いついてきた!
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