235 焔狼族の力

文字数 1,276文字

 どうも、リビングアーマーの俺です。

 神聖大要塞ガルシラの一角。
 アンデッド系モンスターを率いた魔族の見張りがいて身を隠してます。

 どうしたもんかと考えているとロロコが、

「わたしがなんとかできるかも」

 とのこと。
 マジで?

「わからないけど、大丈夫」

 いやほんとに大丈夫それ?

 しかし、そういえば魔王になったクーネアさん。
 彼女は焔狼族の姿になったロロコに警戒心を抱いていた。

 焔狼族は魔族や魔王への対抗手段を持っているのかもしれない。
 そして先祖返りしたロロコにその記憶が蘇りつつあるのかも。

〈よし……じゃあ、あそこにいる数が少なめの集団で試してみよう。なんかあったらすぐに援護する〉

「わかった」

 ロロコは頷くと目を閉じた。

 やがてロロコの周囲で魔力が渦を巻き始める。
 それがチリチリと焦げ付くような音を立て炎に変質する。

 その炎はロロコの身を燃やすことはない。
 ロロコ自身も熱そうな様子はなく、むしろ心地よさそうな顔をしている。

 やがて炎がロロコを包み込んで姿を隠す。

 炎がパッと拡散すると、そこには狼の姿があった。

「誰だっ!」

 今の炎で気づいたのか、魔族たちがこちらへ向かってくる。

 ロロコは物陰から出ると、そいつらに向かって前脚を一振り。

 ごぉっ!と炎が地面を走り、魔族に激突!
 大炎上!
 ぎゃーーーー!

〈お、おいロロコ!?〉

 死ぬじゃんあれ!
 殺しちゃダメじゃん!

「よく見て」

 え?

 炎は魔族を包み込んだが燃やすことはせず、そのままたち消えていった。
 そして残った魔族は、

「え、オレ何して……うわ、なんだこいつら!?」

 普通の人間に戻った!?

 闇色の肌が普通の色に戻り、髪や目の色も変化していた。

 そして周りにいるモンスターたちは獲物を見つけたと言わんばかりの態度。
 今にも彼に飛びかかりそうだ。

 俺はとっさに飛び出した。

 えーと。
 アンデッド系モンスターは物理攻撃も魔法攻撃も効かないんだよな。
 じゃあどうすれば?

「リビたん、原初魔法」

 あ、そうか。
 魔法と言っても原初魔法はちょっと質が違う。

 魔力を高濃度に圧縮して放出するみたいなもの。
 なので霊体が魔力に置き換わったっていうアンデッドには……。

 ――ヒュゴッ……!

「おおおお……!」
「うああああ……!」

 効果てきめん!

 原初魔法ビームを浴びたアンデッドたちは成仏するみたいに消えていった。
 成仏かな?
 昇天かな?
 わからないけど、とにかくなんとかなったようだ。

 俺たちは人間に戻った男性のところへ駆け寄る。
 ロロコはもう人間態に戻っていた。

「大丈夫か?」
「こ、皇帝陛下!? これは一体……」

 どうやら魔族になっていた間の記憶はないみたいだ。

 ってことは大陸がえらいことになってることとかも知らないのか。

 それを全部説明してる時間はさすがにない。
 かといってこの辺に適当に放置してくのも危険だし。

 どうしようかと思っていると、声がかかった。

「陛下っ!」

 見れば軽装鎧を身にまとった偉丈夫がこちらに駆けてくる。
 え、だれ?

「ガイアン、無事だったか!」

 あ、この人が騎士団長のガイアンさん!?
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