31 今度こそダンジョンの外へ

文字数 2,161文字

『リビングアーマー LV.17 名前:なし
 HP:576/865(658/923)
 MP:316/437(354/598)
 物理攻撃力:125(201)
 物理防御力:143(197)
 魔法攻撃力:3(3)
 魔法抵抗力:3(3)
 スキル:霊体感覚+1、霊体操作+1
 称号:駆け出し冒険者、初級冒険者、魔物討伐者
 称号特典:魔力習得率アップLV.1、魔力変換率アップLV.1、恐怖耐性LV.3』

◆◇◆◇◆

 どうも、リビングアーマーです。
 犬耳っ娘と一緒に蜘蛛集団から逃れ、ようやく鉱山の出口にたどり着きつつあります。

 けど、ちょっと休憩。

 べつに、出口まで徒歩5分!ってわけでもないみたいだし。

 休めるときに休んでおいたほうがいい。

 というわけで、ちょっとステータスをチェックしてたんだけど。

〈うーん……〉
「どうしたの」
〈なんか、ステータスが上がってないみたいなんだよね〉

 というか、むしろ下がってるよね?
 レベルも上がってないし。

 フライング・アラクニドにストリング・アラクニド。
 けっこう頑張って倒したと思ったんだけど。

 それとも、あいつら魔力がすごい低いとか?

 この世界、死んだ魔物の魔力が経験値になってレベルが上がるらしいから。
 倒すのにどんなに大変でも、魔力が低いともうけが少ないっていうね……。

 と思ったら、ロロコに違うと言われた。

「たぶん、あいつらは死んでない」
〈え?〉
「アラクニド種は、高いところから落ちても平気」
〈あー……〉

 なるほど。
 そういや、あいつらには攻撃を直撃できてない。
 みんな、谷底に落ちてっただけだ。

 え、マジ!?
 じゃああの戦闘で獲得経験値ゼロなの!?

 そりゃないよ~。

 って嘆いてる間に、各数値が下がっている理由に気づいた。

 これあれだ。
 鱗状鎧をなくした分だ。

 ちくしょう。
 なんだか踏んだり蹴ったりだな。

〈スキルの下にある『+1』ってのはなんだ?〉

 たしか前はついてなかったよな?

「それは、ごほうび」
〈ごほうび?〉
「そのスキルをたくさん使うと、増えていく」
〈へえ……称号特典のレベルとはどう違うんだ?〉
「ごほうびのほうは、数字が増えると、称号が手に入ったり、スキルが進化したりする」
〈おお、なるほど!〉
「称号特典のほうは、ただ、どのくらいのレベルか示してるだけ」

 スキルを使うと、進化したり称号が増える。
 称号が増えると、称号特典が増える。

 冒険書にこの順番で書いてあるのも意味があったんだな。

 で、俺の場合。
 霊体感覚だの霊体操作だのは日常的に行ってる。
 だから、普通の人間より数値が増えるのは早いんじゃないか?
 進化するのか、称号がもらえるのかわからないけど、楽しみだぜ。

〈ところで、ロロコはどんなスキル持ってるんだ?〉
「それは、わからない」
〈え、そうなのか〉
「冒険書がないから」

 そうだった。
 人犬族が冒険書を持つことは、領主が禁じてるんだっけな。

「スキルっていうのは、その人の魔力の一部が、その能力に特化したってこと」
〈それをこの冒険書が読みとって、表示してくれてるってわけか〉
「そう」

 なるほどなー。
 それだと、似たタイプのスキルや、自分に合ったスキルを伸ばすと成長が早そうだな。

〈しかし、どんなスキルを持ってるかはわかったほうが便利だろ〉
「でも、あまりスキルを持ってると、冒険者になれちゃうから」
〈……どういうことだ?〉
「スキルポイントが5以上あればギルドに申請して冒険者になれる」

 スキルポイントってのは、スキルがいくつあるかを表す数値らしい。
 +がなければ0.5、+があればその数字。
 俺の場合は、現在のスキルポイントは2ってことだな。

 あ、じゃあ俺、まだ冒険者にはなれないんだな……。

〈でも、なんで冒険者になるとダメなんだ?〉

 よくわからんが、ギルドに所属すると恩恵があるんじゃないだろうか。

「冒険者が10人いる集団は、自治権がもらえる。領主はそれがいやなんだって」
〈はぁ?〉
「ラッカムさんはそう言ってた」

 つまりあれか。
 人犬族をこき使いたいから、自治権なんか手に入れられちゃ困る。
 だから冒険者ギルドへの申請は禁止。
 冒険書でスキルを確認するのも禁止ってわけか。

 ひどい領主だ。

 そもそも、人犬族を働かせているこの鉱山。
 どう考えても安全な環境とは思えない。
 モンスターがトロッコ襲ってきたしな。

 きっと、普通の人間だとなり手がいないんだろう。
 だから人犬族を無理やり働かせてるんだ。

 そして、いろいろ禁止事項を設けて縛ってる。

〈……おい、ロロコ〉
「どうしたの?」
〈お前の仲間、絶対逃がしてやろうぜ〉
「?」

 ロロコは不思議そうな顔してるな。

 俺も、なんで自分が突然そんなこと思ったかわからん。
 ただ、その領主がすんげームカついたんでね。
 なんか嫌がることをしてやりたくなった。
 そんだけだ。

 さて、休憩も済んだし、そろそろ出発だ。

 ようやくこの洞窟ともおさらばだ!
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