EX31 騎士団長とゴーレムの話

文字数 839文字

「団長。各隊、突入準備、整いました」

 部下の言葉にガイアンは立ち上がる。

 軍務大臣からのエルフ生捕りの命令。
 気の進まない任務だが、拒絶するわけにはいかない。

 ガイアンは幕屋から出ると、命令を下した。

「全軍、進撃開始! フリエルノーラ国を包囲! 一気に攻め落とせ!」

 地を震わせるような喚声が響き渡る。

 いかに気の進まない任務でも、戦いが始まれば別だ。
 ガイアンの部下は総じて練度が高い。
 士気の低いまま突撃して、自分と仲間を危険に晒すことはない。

 ガイアン自身の意識もすでに切り替わっている。
 個人的な感情とは別に、エルフたちを敵と認識。
 否――捕らえるべき獲物と見定めている。

 だが――。

「な……っ!?」

 突如、足元が揺らぎ、ガイアンは体勢を崩す。

「なんだ!」
「地震か!?」

 周りの兵士たちも動揺し、足を止めている。
 中には落馬している者もいた。

「進軍停止! 全軍止まれ!」

 ガイアンは慌てて命令を下す。
 このままでは、突入前に部隊に被害が出かねない。

「……まさか、エルフどもの魔法攻撃でしょうか?」

「こんな中途半端なものがか?」

 部下の言葉に、ガイアンは訝しむ。
 可能性はなくはないが、違和感がある。

 しばらく様子を見るが、新たな揺れは起こらない。
 エルフたちが攻撃してくる様子もない。

「普通の地震だったようだな……」

 ガイアンは再度、進軍の命令を下そうとする。
 士気が若干下がってしまったが、仕方がない。

 だが、再び大地が揺れ始める。
 しかも、今度は長く、細かな揺れが続いた。

「これは……」

 明らかに普通の地震ではない。

「全軍、警戒せよ! 奇襲に気をつけろ!」

 エルフが何か、魔法を駆使した思いもよらない攻撃を仕掛けてくるかもしれない。
 そう考えたガイアンだったが。

 起こった出来事は、彼の想像を大きく超えていた。

「だ、団長! 大変です!」

 部下が駆け寄ってきて報告する。

「ち、近くの絶海の孤島ダンジョンの入り口から、大量のゴーレムが出現して、こちらへ向かってきます!」
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