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文字数 1,525文字

シナガワがバーを出て数十分。

今まで映っていたミスターEPICが消えたと思ったら、
別室の様子がテレビに流れた。

『んぐ~!! んんっ!!』

「ん? なんだぁ? ありゃ」

最初に気づいたのは東さん。
布袋をかぶった華奢な男が、ドラゴンキャッスルの制服を着た男たちに押さえつけられている。
あのスーツ……まさか。

「シナガワ!?」

俺の声に反応して、みんなが画面を見つめる。
シナガワだと思われる男は抵抗するが、最終的に頭を板の上に乗せられた。

……最悪だ。
これはホラー映画で見たことがある。
シナガワが首を乗せられたのは、いわゆる……。

「ギロチン……」

キャットがぼそっとつぶやく。
いや、まさかな。
まさか、面接に落とされたからって、ギロチンにかけられるなんて……。

「そんなことありえないだろ!? シナガワっ!!」

俺は大声で画面に呼びかける。
だけど、男たちはシナガワを板に固定して、部屋から出て行く。

「くそっ! こんなことになるなんて、思ってなかった! なんでギロチンなんだよ!!
ただ、面接が失敗しただけじゃねーのか!?」

「……聞いたことがあるわ。EPIC社の入社試験の実態は知られていない。それは、正式採用が決まった人間以外『帰ってきてないから』だと。てっきり都市伝説だと思っていたんですけど」

りえかさんが神妙な面持ちで語る。
それが本当だとしたら……!

「俺たち、罪を犯してるってことじゃねーかよ!! おい!! ミスターEPIC!! 聞いてるんだろ!? シナガワを助けろよ!!」

俺はテレビをガクガク揺さぶる。
だが、EPIC社は容赦しなかった。
画面がズームし、布袋をかぶったシナガワを映したその瞬間――。

ガタンッ!!

「!!」

ショックでその場にいた全員が固まる。
床に転がるのは、シナガワの頭が入った布袋だ。

『これでちょ~っとはわかったかなぁ?』

再び画面がミスターEPICに戻る。

「な、なんで……なんでギロチンなんかにかけるんだ! シナガワはただ、うまく志望動機を言えなかっただけだろう!?」

俺が抗議しても、ミスターEPICは動じない。

『あれれ~? わかったと思ってたんだけどなぁ?』
「……何がだよっ!」

ミスターEPICはくすくす笑いながら、キレる俺に言った。

『キミたちは、わが社への就職志望者でもあると同時に、面接の試験官だってこと。そして不採用になった人間は、口を永遠に塞いでもらう……な~んてね☆』

「!!」

……まさか俺たちは、これからも自分たちで相手を蹴落としていかないといけないのか?
しかも落ちた人間はもれなく殺される……。
自分が指名されたら――。
シナガワの頭は、まだ床に転がっている。

くそ……くそっ!!
俺はどうすりゃいいんだよっ!!
テーブルをダンッ!! と叩くと、画面の中のミスターEPICが笑った。

『はいは~い、人が死んでも気にしないっ☆ それよりも次の質問、していいかなぁ?』

……ちくしょう! 10万円にホイホイつられてきた俺たちには、もう選択肢なんか残されてないってことか!

その場にいる全員が、全員の顔を見渡す。
こいつらは敵だ。だが、その敵に認められないと自分の命が……。

『今から棄権はナシ、だからね? CLUB777に入ってオレの会社の社員になるか、永遠に口を閉じて家に帰るか……いや家にも帰れないかな? 東京湾の底に沈む~なんて、ちょっと古い表現だと思って使わなかったけど。あははっ☆』

イカレてる。クロスワードの問題を出すくらいだから、少しは許容していた。
だけど、こいつは完全にアウト。
筆記試験問題だけならともかく、命を懸けた選択を迫ってくる。
それは……人間的に壊れているからだろう。

楽しそうに口元をむずむずさせるミスターEPICに、俺は嫌悪感を抱きはじめていた。
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