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文字数 1,054文字

「ねぇ、ここいい?」

 体育の次の時間。英語。
 先ほどの体育でイキっていたやつが、僕の隣の席に座る。ヤバい、うざい。だからって、断るわけにはいかない。

 僕は置いていたリュックサックを隣の席から移動させ、地面に置く。するとそこにヤツが座った。

「オレ、伊藤要(いとう・かなめ)っていうんだ。さっきは体育でボールぶつけそうになって、ごめん」
「いいよ、別に……」

「…………」
「…………」

 やっぱり自己紹介待ちだよな? 僕も名乗らないとダメだよな。はぁ。

「僕は篠宮つくもって言います」
「つくも!? へぇ、どんな字書くの?」
「色の『白』で『つくも』……です」
「珍しいね! 篠宮くんって何歳? オレと同い年くらいに見えるけど」
「17……一応、普通の高校3年と同じだよ」
「同い年じゃん! よろしくね!」

 なんなんだ、このテンションの高さは。

 鬱陶しい伊藤は、次の時間も僕の隣に陣取る。先ほどの体育で同じチームになった同じ年代の『友達』はできたはずだろう? なんでよりによって僕なんだ。

 あまりにも鬱陶しかったので、僕は思わず伊藤の心をのぞいた。なんで『友達』は他にもいるのに、僕にくっついてくるんだ?

『篠宮くん、さっきの「アレ」なんだったんだろう?』

 ガタンッ!!

「大丈夫?」
「あ、うん……」

 思わず体を震わせ、イスをずらしてしまった。こいつ……さっきのテレポート見てたのか? 一瞬だったし、本当に至近距離だったから気づかれないと思ったのに。

「あのさ、友達のところ行かないの?」

 面倒くさくなる前に追っ払ってしまおう。僕は何気なく先ほどのチームの仲間のところにいかないかと促す。僕のチームとは違い、こいつのいたチームは同い年で固まっていた。つまり……このスクーリングで敵視すべき陽キャ、というわけだ。

「え? 友達? ああ、さっきのチームの人たち? それよりさぁ、オレ、君と話したいと思って」
「話すって、何を……?」

 ごくりと唾を飲み込む。こいつはテレポートに気づいている。まさか……。

「さっきのアレ、縮地か!?」
「……え」

 目を輝かせながら身を乗り出して聞いてくる伊藤。
 縮地って、よく漫画とかで出てくるアレのことか? もしかして伊藤、テレポートを『縮地』とかいう術と勘違いしてる?

「いやぁ、オレ以外にも縮地が使えるやつが学園にいるとは思わなかったよ」
「『オレ以外にも』って、君もその……使えるの? 縮地って技」
「まあな。オレ、忍者なんだよ」
「…………は?」

 何を言ってるんだ、こいつは。

 意味がわからずぽかんとしているうちに、授業は始まった。
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