1-6

文字数 1,246文字

 グローバルワンダーランドに行くことが決まったが、僕は伊藤が好きにはなれなかった。

 スクーリングの授業には一緒に出る。
 昼ごはんも一緒だ。

 仲のいい友達じゃなかったら、こんなことはしないと思う。
 だけど、僕はこの『陽キャ』が嫌いだ。

 伊藤は、僕以外にも友達を作れる。しかも自然に。全日制の学校に行っても、違和感がないだろう。

 それでも通信制に通っているのは、忍術の修行で山籠もりしているからっていうだけだし。

 特殊な事情っていうのは同じだけど、僕みたいに人と距離を置いてきた人間とは違う。こいつの距離感は0なんだ。僕に無遠慮というわけではないけども、何となく居心地が悪い。

 だけど、どうせ東京にいるときだけの関係だ。スクーリングが終わり、物見遊山でグローバルワンダーランドに行ったあとは、連絡先を交換していてもまた他人に戻るだろう。

 授業が終わり、伊藤と別れてから僕は、ホテルでグローバルワンダーランドのHPにアクセスしていた。

 グローバルワンダーランドはいつも混んでいる。そんなイメージだったが、HPを見てびっくりした。最近は事前予約制で入場制限をしている。しかも、顔認証システムを導入しているようで、顔写真を登録しないといけないらしい。

 僕は伊藤にLINEした。

『先にチケット取ってないと入れないみたいだよ。しかも顔認証があるから、各自でチケット買わないといけないみたい』

 返信はすぐ来た。伊藤もスクーリングはホテルからだ。勉強以外やることがないんだろう。僕はいつも寝ることしかやることはないけども。

『マジか。だったら各自で取ろう。アフター5パスポートでいいよな』

 僕は返事をすると、すぐにまたHPに画面を戻す。

『チケットを購入する』をタップすると、購入画面が出てきた。

「えぇ? 氏名とか年齢も入力するのか? 個人情報取りまくりじゃん……」

 夢と希望と幻の国は、今や個人登録しないと入場不可ってわけか。まあわからなくはない。施設の安全面とかを考えれば、特定している個人を入場させたほうが何かと便利だ。

 指示通り、名前や年齢・住所を登録すると、最後に顔写真だ。……なかなかうまく撮れない。これは笑った顔がいいのか? と言っても、顔が引きつる。いいや、いつもの仏頂面でも。

 カシャッとスマホが音を鳴らすと、僕は情報をすべて登録した。すると――。

『ご登録ありがとうございます。Webチケットを発券しますので、当日はこちらのQRコードを入園ゲートでかざしてください。ありがとうございます』

 ……これでチケットは買えたのかな? スマホ決済で入園料は支払われたみたいだし。

 もう一度僕は伊藤に連絡する。

『チケット買えた?』
『買えたよ! これで明日の放課後、行けるな! すっげぇ楽しみ!』

 ビックリマークどれだけつけるんだよ……。興奮しすぎだろう。
 でも、僕も僕でわくわくしている自分がいる。

 明日――スクーリングが終わったら、僕らは米浜にあるGWLに行く。巷でもてはやされている、夢と希望と幻の国へ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み