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文字数 1,144文字

 しばらく上昇すると、急に止まり、座席が前に出る。
 ブオン、と音が鳴ると、サイバー空間にVRの女の子が現れる。ネコ耳がついているのがあざとい。ネコ耳カチューシャを付けといてなんだけど。

『ハァイ! 私の名前はLuv(ラブ)。ここのサイバータワーの管理人だよ!』

「ずいぶん他のアトラクションとは違った感じだな」
「シロもそう思った? なんかファンシー系じゃないよね」

 ふたりがこそこそ話しているのを聞く。確かに……。っていうか、仕様書に書いてあったのって、こんなのだっけ? 確か、キャラクターのネッコーとかウサギーが出てきてショーを始めるとか、そんなんだったような……。あ~、ボクも忙しかったからうろ覚えだ。

『はにゃ? キャット、難しい顔してる~。どうかした?』
「!? ボクの名前……やっぱりこんなプログラム入ってた覚えない!」
「え!?」

 カナメが声を上げる。
 やっぱりおかしい。どういうこと!?

『あっはは☆驚いちゃってるみたいだね? ツクモとカナメ、それとリズ……今日はダブルデート楽しかった?』

「だ、ダブルデート!?」
「僕らは仕事の一環だったんですけど……」

 焦るカナメと対照的に、ツクモは冷静に返す。ダブルデートではないけど、そこまでビジネスライクに言われるのもシャクだなぁというお気持ちだ。
 いや、それよりも!

「Luv、とか言ったっけ? どうしてボクらの名前を知ってるの? その前に! このアトラクションをまるまるハッキングとかしてないよね?」

 それはないはず……。ハッキングとか、何かボクのファイアウォールやゲートが破られるなら、スマホが『キャットアラート』を鳴らすようにシステムを組んでいるから。
 そんなボクの考えを読んだように、Luvは悪どい笑みを見せて言った。

『あれれぇ? キャットアラート、鳴ってないのぉ? おかしいなぁ~? もしかして、その特製のスマホ自体、ハッキングされちゃったとか?』

「っ……!」

 そんな! ボクのシステムが破られることなんて、あるわけが……。

「あの、キャット、どういうこと? アトラクションがハッキングって……」
「部外者が聞かないでよ、ボクもパニクってんだから」

 この後、生贄にしようとしていたリズに当たってしまうけど、これじゃあアンダーベースのショウをツクモとカナメに見せるって場合じゃなくなるぞ。どうしよう。

『これからオマエラにはEPICな出来事が起こるよ! EPIC社なだけにね♡さぁて、無事、生き残れるかなぁ?』

 こいつ、EPIC社のことを知ってる? まさか、海外からのハッカーとか、DCみたいな組織?色んな考えが頭の中をぐるぐると回る。

『それでは! はば、ないすでぃ♡』
「「「「!!!」」」」

 ガタン。

 座っていた座席が、垂直に落下した――。
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