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文字数 687文字

 伊藤と一緒にラ・ジーナの乗り場に着く。昔テレビでやっていた『GWL3時間待ち』っていうのは幻だったのか? ってくらい早く乗車できた。

 トロッコ型の乗り物に乗ると、安全バーが下がる。どうやらこのアトラクションは鉱山をモチーフに作られているらしい。

「それでは出発しまーす、いってらしゃい!」

 キャストの女性が手を振ると、乗っている人間全員が振り返す。伊藤もだ。なんだ、これ。そう思いながら、僕も同じように振り返した。

 ゆっくりとトロッコは最高地点に上っていく。そこから下降を繰り返すのだろう。風を切って走る爽快感はあると思う。最高地点つくと否が応でもドキドキしてくる。

 そのときだった。何かが光った。写真か? そう思った瞬間、ガタン、と音がしてジェットコースターの下降が始まる。最高速でぐるぐるとレールの上を回ると、暗い山を模した建物の中へ。そこを一瞬で通り抜け、今度は回転。水上の上を縦横無尽に走り回る。
 スピードが弱まった。これでお終いか。ガタゴトとホームにトロッコが戻っていく。もう少しで降口だ。

「あー面白かったな!」

 伊藤はさっきから興奮しっぱなしだ。さすが夢と希望と幻の国――。

 ガタン。

「あれ?」

 俺と伊藤のトロッコが止まる。おかしい。連結している他の人が乗るトロッコは、もう降り場に着いている。なんで最後尾の僕らだけ止まってるんだ?

「お、おい、連結が外されてる。オレたちだけ、取り残された!」
「ま、まさか。故障か何かじゃないか? すぐキャストが来るよ」
 
 焦る僕たち。大丈夫、GWLはテーマパーク大手だ。すぐにキャストが助けに来る――そう思ったのは間違いだった。
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