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文字数 942文字

「やった! 取れたっ!」

 Aちゃんは革バンドが取れると、さっそく部屋の中を探す。まず、扉。当然ながら鍵がかかっているようで開かない。あと、身長の高いJさんに肩車してもらい、天井にあるダクトを見たが、そこも鍵がかかっており開かないような仕組みになっていた。

 この部屋には窓もない。床を這って出口を探しても何も見つからない。これは八方ふさがりというところか。いくら手錠が取れても、逃げ口がなければ意味がない。

 同時にババ抜きが終わると、またDCがテレビに映る。

『部屋から逃げることはできないからね。Aちゃん残念でした~!』

「うっ……」

 ずっと泣くのを我慢していたAちゃんだが、とうとう涙を流す。ここまで頑張れたんだから、もう泣くことを我慢させることはできない。私たちに嗚咽を漏らしながらデスクに突っ伏すAちゃんを励ますことなんて無理だ。この子は頑張った。この子だけでもにがしてあげることはできないのだろうか。Aちゃんはナイフをデスクに置いた。

『ババ抜きに負けたのは……Kさんだったね! Kさんの素性について、発表します!』

 DCから画面が切り替わる。

『K――銀行員。家族構成は父・母・妹。学生時代はやんちゃをしており、常に刃物を持ち歩いていた。今も護身用にバタフライナイフを所持』

「……え?」

 この経歴に一番驚いていたのはKさんだった。

「お、俺が銀行員? 悪人じゃないのか?」

「バタフライナイフを持っていたのは、要するにいきがってたってやつっぽいですよね。まぁ、銀行員だと身の危険を感じることもあったのかもしれないけど」

 Sくんがやれやれと言った表情を見せる。でもまだわからない。学生時代にやんちゃってところが気になる。そこで人を殺したのでは……?

『それじゃ、多数決を始めるよ!』

 私たちはまたデスクに顔を伏せる。DCが多数決を取ると、顔を上げた。

『今回は……2対3で『悪いヤツ』に決定! ……なんだけど、大きな問題が起こった』

「問題? な、何だよ!」

 Jさんが声を震わせると、画面の中のDCは笑い声をあげた。

『実はね、Kさんが悪いヤツっていうのは大間違い! この人は本当にただの銀行員だったんだよ』

「えっ……」

 私たちの多数決が間違っていたっていうのなら……どうすればいいっていうの? 
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