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文字数 1,366文字
僕らが通されたのは、パソコンとたくさんの箱がある資料室みたいな場所だった。なんなんだ、こんなところに通して。
僕と伊藤はヒロアキさんにイスを勧められて、そこに座る。尋問でも始まるのか? だけど、ヒロアキさんは言っていた。「伊藤の叔母さんの穴埋めが必要だ」と。
これはつまり……。
「ヘッドハンティング、青田買いってやつだよ」
ユウキさんは僕の思考を読んだのか、その言葉を口にした。
「伊藤要――高校3年。伊賀忍者の末裔。瑞希さんも忍者の修行を受けていたからな。俺らの警護にするには申し分ない。成績は今のところ中の中。ま、そこは努力してもらわないといけないけどな」
「…………」
ヒロアキさんが経歴を読み上げる中、伊藤は黙ったままだ。いくらEPIC社に入社することを考えていたとしても、こんな『人を殺させるような企業』だなんて思いもしなかっただろうな。
「ちょっと待ってください」
ようやく伊藤が口を開いた。
「オレがEPIC社に目をつけられたのは構いません。でもシロ……つくもは関係ない!」
「いや、俺たちは、篠宮の超能力とコネがぜひとも欲しい。篠宮の家はコンサル会社として有名だからな。なんでも超能力が使えると聞く。実際その力、見せてもらった」
ヒロアキさんは淡々と資料を見ながら僕らに告げる。
ヘッドハンティング? 青田買い? いや、そういう意味はわかる。僕らは特殊な肩書と能力、家柄を持っている。僕らの能力を欲しがる人間は山ほどいるだろう。EPIC社もそのうちのひとつだったってわけか。
「……だったら僕らがあんたらを殺すのもたやすいってわかるでしょう?」
僕が試すように尋ねると、ユウキさんは笑った。
「殺してもいいけど、殺してなんになるの? ここは迷路になっているから、透視能力があっても通れない場所はいくらでもあるよ?」
「…………」
僕が答えに窮すると、ユウキさんは手を広げて笑った。
「オレらの元で働くの、損じゃないと思うけどなぁ~? 給与はガッツリもらえるし、めちゃくちゃスリリングで楽しい時間を過ごせるよ? どうせ人生なんて死ぬまでの暇つぶしなんだから!」
ユウキさんの言葉にハッとする。……僕と同じことを考えてる?
ヒロアキさんはまたまたため息をつくと、手元の書類をトントンと机でそろえてつぶやいた。
「ユウキの戯言はともかく、金や生活には困らないよ。ま、元から君らに金や生活の心配はないだろうが……」
僕はそりゃそうだとフンと鼻息を荒くした。いくらヘッドハンティングだ、青田買いだと言っても、やり方がある。いきなり遊園地で楽しんでいた子どもを捕まえて、人殺しさせるだなんて。
「ただ、これだけは言える。危険はつきまとうが、生きがいはある。俺らの仕事は唯一無二のものだ。俺たちだけにしかできない」
「生きがい……」
僕はその言葉に反応した。
生きがい。
今まで何となく生きていた。人生なんてどうせ死ぬまでの暇つぶし。どうやって過ごそうか、過ごし方がわからなかったら死んでもいいとすら考えることもあった。
イキイキとしたことなんて……僕にはなかったんだ。
もしここのEPIC社で働いたら、そんな心境は変わるだろうか。いやいや、ここの会社は人殺しを余裕でさせるようなブラック会社だぞ!?
「伊藤、君はどう思ってる?」
「オレ? オレは……」
僕と伊藤はヒロアキさんにイスを勧められて、そこに座る。尋問でも始まるのか? だけど、ヒロアキさんは言っていた。「伊藤の叔母さんの穴埋めが必要だ」と。
これはつまり……。
「ヘッドハンティング、青田買いってやつだよ」
ユウキさんは僕の思考を読んだのか、その言葉を口にした。
「伊藤要――高校3年。伊賀忍者の末裔。瑞希さんも忍者の修行を受けていたからな。俺らの警護にするには申し分ない。成績は今のところ中の中。ま、そこは努力してもらわないといけないけどな」
「…………」
ヒロアキさんが経歴を読み上げる中、伊藤は黙ったままだ。いくらEPIC社に入社することを考えていたとしても、こんな『人を殺させるような企業』だなんて思いもしなかっただろうな。
「ちょっと待ってください」
ようやく伊藤が口を開いた。
「オレがEPIC社に目をつけられたのは構いません。でもシロ……つくもは関係ない!」
「いや、俺たちは、篠宮の超能力とコネがぜひとも欲しい。篠宮の家はコンサル会社として有名だからな。なんでも超能力が使えると聞く。実際その力、見せてもらった」
ヒロアキさんは淡々と資料を見ながら僕らに告げる。
ヘッドハンティング? 青田買い? いや、そういう意味はわかる。僕らは特殊な肩書と能力、家柄を持っている。僕らの能力を欲しがる人間は山ほどいるだろう。EPIC社もそのうちのひとつだったってわけか。
「……だったら僕らがあんたらを殺すのもたやすいってわかるでしょう?」
僕が試すように尋ねると、ユウキさんは笑った。
「殺してもいいけど、殺してなんになるの? ここは迷路になっているから、透視能力があっても通れない場所はいくらでもあるよ?」
「…………」
僕が答えに窮すると、ユウキさんは手を広げて笑った。
「オレらの元で働くの、損じゃないと思うけどなぁ~? 給与はガッツリもらえるし、めちゃくちゃスリリングで楽しい時間を過ごせるよ? どうせ人生なんて死ぬまでの暇つぶしなんだから!」
ユウキさんの言葉にハッとする。……僕と同じことを考えてる?
ヒロアキさんはまたまたため息をつくと、手元の書類をトントンと机でそろえてつぶやいた。
「ユウキの戯言はともかく、金や生活には困らないよ。ま、元から君らに金や生活の心配はないだろうが……」
僕はそりゃそうだとフンと鼻息を荒くした。いくらヘッドハンティングだ、青田買いだと言っても、やり方がある。いきなり遊園地で楽しんでいた子どもを捕まえて、人殺しさせるだなんて。
「ただ、これだけは言える。危険はつきまとうが、生きがいはある。俺らの仕事は唯一無二のものだ。俺たちだけにしかできない」
「生きがい……」
僕はその言葉に反応した。
生きがい。
今まで何となく生きていた。人生なんてどうせ死ぬまでの暇つぶし。どうやって過ごそうか、過ごし方がわからなかったら死んでもいいとすら考えることもあった。
イキイキとしたことなんて……僕にはなかったんだ。
もしここのEPIC社で働いたら、そんな心境は変わるだろうか。いやいや、ここの会社は人殺しを余裕でさせるようなブラック会社だぞ!?
「伊藤、君はどう思ってる?」
「オレ? オレは……」