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文字数 968文字

 垂直落下して、元の乗り場に戻ってくると、ボクはすぐにスマホを取り出して、安全バーのロックを外す。全員が乗り物から降りると、そこで初めてキャットアラートが鳴った。

『緊急事態発生! 緊急事態発生! 何者カガEPIC社システムニ侵入シタ模様デス!』
「うるさ~い! そんなことはもう知ってるよ! もう、ポンコツAI!」
『モウシワケゴザイマセン』

 無味乾燥とした音声システムが返答する。AIって言っても、音声認識するくらいのシステムしか組んでいないから、当たってもしょうがないんだけど。

「キャットさん、緊急事態だったらヒロアキさんやユウキさんに連絡したほうがいいんじゃないですか」
「そうそう、報連相は基本じゃん?」

 くっ……新人ふたりに説教されるなんて。でも、結局報告したところで対応するのはボクなんだ。今は何が起きているか、状況を確認しないと。そうじゃなきゃ、報告も何もない。

「とりあえず、他のアトラクションに異常が出ていないか……外に出てみないと」
「スマホでわからないんですか?」
「スマホ自体がハッキングされてるんだから、目視しないと意味ないでしょ?」
「そりゃそうか」

 ツクモとカナメは重大事件だと把握しているのかしてないのか、イマイチわからない。まぁまだ内定が出ているだけだし、ことの大きさがわからないんだろう。ボクとしてみたら重大も重大、最低最悪の事態だ。

「ああ! もうっ! ボクの構築したシステムが破られるなんてっ!!」
「キャット……ここから出ないほうがいい」
「リズ?」

 リズがボクのTシャツの端を掴む。

「実はさっき……視えたの。ここを出たら襲われるところを」
「!!」

 襲われる? GWL内で? そんなの無理なはずだ。違法なことをやっているのは、限られた裏の場所だけ。GWL自体で犯罪なんて、あり得ない。

 リズの未来予知は確かに当たる。でも……。

「それでもボクは行かないと。何が起こっているか、この目で確認しないといけないから」
「…………」

 リズは閉口する。

「殺すの、ちょっと遅くなるかもしれないけど、いいよね? 『どうせ人はいつか死ぬ』んだったら、少しくらい長く生きたって」
「う、うん……」
「ツクモ、カナメ! 現状確認するからついてきて!」
「仕方ない……」
「わかったよ!」

 ボクら4人はサイバータワーの乗り場から、外へと飛び出した。
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