3-5
文字数 1,495文字
雫に肩をつかまれると、思い切り引っ張られ倒される。蓮史郎くんはナイフを振り回しながら、私のえり首をつかむ。
「友情ってさ、本当にもろいよね。特に女子は」
「雫! ファルカタを使ってっ! 助けて!!」
舞台袖に飛び込んだ雫は、ファルカタを手にする。だけどこちらに来る気配も、振り上げる気配もなく、蓮史郎くんの動向を眺めているだけだ。まるで私を殺すのを待つように……。
「あれ、助ける気ないと思うよ? キミが俺に殺されるのを待ってる」
「嘘でしょ、雫! 私たちはずっと一緒の幼なじみで……」
「……気が変わった。このままキミを殺すんじゃつまらない。ターゲットを雫さんに変えようかな」
「えっ……」
蓮史郎くんは私を話すと、ひょいとステージに上がる。
「へぇ、なかなかいいじゃん。ここで堂々と殺人が行えるのか。悪くない」
「雫っ!」
雫は震えながら、ファルカタを振りあげようとした――が。
「ナイフのほうが小回りがきく……がっ!?」
「ミフユ!?」
私は蓮史郎くんの頭を、イスで思い切り殴った。どうにか気絶してくれたようで、安心する。
なんとか助かって、その場にしゃがむ。大きなため息が自然と出て、ようやく帰れるかもしれないという希望が見えた気がした。
それなのに――。
『は~い、ストップ!』
パソコンから甲高い声が聞こえる。Ms.EPICだ。私たちは蓮史郎くんを倒した。殺してはいないけど、これで研修も終わりにしてくれないのだろうか。そう期待したのは甘かった。
『それで? どっちが阿久野蓮史郎を殺すの?』
言葉を失くす。やっぱり倒すだけじゃ無理。人を蹴落とすなんて甘いものじゃない。人の血で手を汚さないと、ここから出ることはできないんだ……。無言で雫を見つめると、雫も私を見ていた。まるで汚いものを見るような目で。
――なんで? 私は人を殺していない。それに、今雫を助けたのは私だ。なのになんでそんな目を私に向けるの?
雫はファルカタを私に突きつけると、そのまま前進する。気迫に押された私は、一歩ずつ後退していく。
「どいて。あんた、どうせ何もできないんでしょ? あたしが殺る」
道をあけると、雫はファルカタを蓮史郎くんに容赦なく振り下ろした。
一瞬「ぐっ」という唸り声が聞こえたが、もう息はしていない。なのに、何度も何度も彼に剣の先端を垂直に振り下ろす。
何度も見た、血飛沫……。真っ白かったシャツは、何度もかぶった血ですでに赤茶色に染まっている。鉄のような香りにももう慣れてしまった。純粋だった私たちは、もういないんだ。
「……ねぇ、ミフユ」
「え?」
「あたしさ、研修が終わったらこのバイト、辞退するわ」
「あ、当たり前だよ! 私だって……」
剣から手を離した雫だったが、どうも様子がおかしい。こんな異常な空間にいたんだから、殺人ショーのバイトなんてやれるわけがない。
「アクター希望の人たち、みんな死んじゃったね」
雫がつぶやく。最初に殺された郁乃さんは、あかりさんを憎んでここへ連れてきた。次の被害者・シュウヘイさんは刑事だった。グローバルワンダーランド運営のEPIC社のこういった悪事を暴こうとしていたのに、人身売買の仲介をしようとしていた村田に殺され、村田も組織に裏切られた。あかりさんは結局郁乃さんの策略通りに死んだ。関連性はないけど、蓮史郎くんはシリアルキラー。放っておいても誰かを殺していたかもしれない。大体この研修をゲームだと言っていたし。
……待てよ。最初のショーから、私たちはみんなで勝手に殺し合っていただけ……?
『そ~ろそろ今回のアンダーベースの特別企画について教えてあげようか?』
「特別……企画?」
「友情ってさ、本当にもろいよね。特に女子は」
「雫! ファルカタを使ってっ! 助けて!!」
舞台袖に飛び込んだ雫は、ファルカタを手にする。だけどこちらに来る気配も、振り上げる気配もなく、蓮史郎くんの動向を眺めているだけだ。まるで私を殺すのを待つように……。
「あれ、助ける気ないと思うよ? キミが俺に殺されるのを待ってる」
「嘘でしょ、雫! 私たちはずっと一緒の幼なじみで……」
「……気が変わった。このままキミを殺すんじゃつまらない。ターゲットを雫さんに変えようかな」
「えっ……」
蓮史郎くんは私を話すと、ひょいとステージに上がる。
「へぇ、なかなかいいじゃん。ここで堂々と殺人が行えるのか。悪くない」
「雫っ!」
雫は震えながら、ファルカタを振りあげようとした――が。
「ナイフのほうが小回りがきく……がっ!?」
「ミフユ!?」
私は蓮史郎くんの頭を、イスで思い切り殴った。どうにか気絶してくれたようで、安心する。
なんとか助かって、その場にしゃがむ。大きなため息が自然と出て、ようやく帰れるかもしれないという希望が見えた気がした。
それなのに――。
『は~い、ストップ!』
パソコンから甲高い声が聞こえる。Ms.EPICだ。私たちは蓮史郎くんを倒した。殺してはいないけど、これで研修も終わりにしてくれないのだろうか。そう期待したのは甘かった。
『それで? どっちが阿久野蓮史郎を殺すの?』
言葉を失くす。やっぱり倒すだけじゃ無理。人を蹴落とすなんて甘いものじゃない。人の血で手を汚さないと、ここから出ることはできないんだ……。無言で雫を見つめると、雫も私を見ていた。まるで汚いものを見るような目で。
――なんで? 私は人を殺していない。それに、今雫を助けたのは私だ。なのになんでそんな目を私に向けるの?
雫はファルカタを私に突きつけると、そのまま前進する。気迫に押された私は、一歩ずつ後退していく。
「どいて。あんた、どうせ何もできないんでしょ? あたしが殺る」
道をあけると、雫はファルカタを蓮史郎くんに容赦なく振り下ろした。
一瞬「ぐっ」という唸り声が聞こえたが、もう息はしていない。なのに、何度も何度も彼に剣の先端を垂直に振り下ろす。
何度も見た、血飛沫……。真っ白かったシャツは、何度もかぶった血ですでに赤茶色に染まっている。鉄のような香りにももう慣れてしまった。純粋だった私たちは、もういないんだ。
「……ねぇ、ミフユ」
「え?」
「あたしさ、研修が終わったらこのバイト、辞退するわ」
「あ、当たり前だよ! 私だって……」
剣から手を離した雫だったが、どうも様子がおかしい。こんな異常な空間にいたんだから、殺人ショーのバイトなんてやれるわけがない。
「アクター希望の人たち、みんな死んじゃったね」
雫がつぶやく。最初に殺された郁乃さんは、あかりさんを憎んでここへ連れてきた。次の被害者・シュウヘイさんは刑事だった。グローバルワンダーランド運営のEPIC社のこういった悪事を暴こうとしていたのに、人身売買の仲介をしようとしていた村田に殺され、村田も組織に裏切られた。あかりさんは結局郁乃さんの策略通りに死んだ。関連性はないけど、蓮史郎くんはシリアルキラー。放っておいても誰かを殺していたかもしれない。大体この研修をゲームだと言っていたし。
……待てよ。最初のショーから、私たちはみんなで勝手に殺し合っていただけ……?
『そ~ろそろ今回のアンダーベースの特別企画について教えてあげようか?』
「特別……企画?」